大田区西蒲田のしんクリニック|内科・糖尿病内科・眼科

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糖尿病に関するページ

股を大きく開くと脂肪燃焼!
四股踏みで7キロやせ
全身引き締まり顔もほっそり

糖尿病患者の血糖値や体重が減った!

近年、急激にふえている糖尿病は早期発見と早期治療が大切です。そして、その治療の大きな柱が、食事療法と運動療法になります。
一般的に、糖尿病の運動療法としては散歩やウォーキングが適しています。しかし、患者さんの中には、年齢とともに股関節がかたくなってしまい、歩くのが苦手な人もいます。そうした患者さんに、私が勧めているのが「四股踏み」です。
「股割り」の姿勢を取ってから四股踏みを行うことで、股関節がやわらかくなります。また、足腰がしっかりしてくるので、歩けなかった人が歩けるようになるのです。血糖値を上げる要因である、肥満の解消にも役立ちます。実際に四股踏みを続けたことで、血糖値や体重がへった患者さんは何人もいるのです。
実は私も、この四股踏みを五年前から自宅で続けていて、減量に成功しました。
きっかけは、よく一緒にコースを回っていたゴルフ仲間のひと言でした。この男性は、年齢は70代後半ですが、20歳以上年下の私よりも足腰が丈夫です。
股関節がとてもやわらかく、ゴルフの球が飛ぶことでも、周囲から一目を置かれていました。
あるとき、その秘訣が毎日続けている四股踏みだと教えてくれたのです。
偶然にも、その少し前に、妻の知り合いである、相撲の貴乃花親方(元横綱の貴乃花)の奥様を通じて、四股踏みがダイエットや健康にいいという話を聞いていました。
当時の私は、スポーツジムをやめたことや、つけ麺などの食べすぎがたたって、毎月のように体重がふえている状態でした。そういう意味でも、いいタイミングだったので、ゴルフの上達とダイエットを兼ねて、四股踏みを始めたのです。

ゴルフの飛距離も10ヤード伸びた!

四股踏みは毎晩、就寝前に5~10分行います。やり方は、お相撲さんの四股踏みと同じです。大きく股を開いて腰を落として下半身をしっかり安定させてから、片足ずつゆっくり高く上げます。
私はこうして四股を踏みますが、足を上げずに、股を開いて腰を落とした状態から腰を上下させる、「股割り」でもじゅうぶんに効果があります。股を大きく開くことで、股関節が効果的に刺激されて柔軟性が出るのです。
そもそも股関節は、ひざ関節よりも先にかたくなる関節です。年を取って歩けなくなるのは、まず股関節がかたくなることから始まります。ひざ痛が起こるのは、その次の過程です。そうなると、寝たきりになってしまうことも考えられます。股関節の柔軟性こそ、若さを保つ条件といえるのです。
また、四股踏みや股割りの動きは、腹斜筋や腹直筋、腹横筋といったおなかの筋肉や、背骨と太ももの骨を結ぶ深部の筋肉である腸腰筋、太ももの内転筋などを鍛える効果があります。
この股関節と筋肉への刺激によって足腰が丈夫になると、体の中心である体幹部がしっかりします。その結果、血流がよくなり、脂肪の燃焼も促進されるのです。特に、下腹部や太ももが引き締まります。実際、私にもそうした効果が出ました。
四股踏みで股関節が柔軟になるにつれて、運動不足で衰えていた足腰がだんだんと強くなっていきました。歩行をはじめ日常の動作全般が軽快になったことはいうまでもなく、期待していたとおり、ゴルフの飛距離も10ヤードほど伸びたのです。
また四股を踏むと血流がよくなるため、体が温かくなります。
それまでよりも、ぐっすり眠れるようになりました。
四股踏みを始めてから、炭水化物やビールを控え、よく噛んで食べるようにしたことも、減量の助けになったのでしょう。
2ヵ月後には、身長が178cmで79kgあった体重が、72kgになりました。7kgの減量に成功したのです。
四股を踏むたびに脂肪が燃えている、そんな感覚もありました。おなかや太ももについた脂肪がへって、体が引き締まりました。以前に比べると首周りや顔もほっそりしたようです。
それ以後も四股踏みを続けたので、リバウンドもありません。ただ、仕事の都合などでしばらくさぼってしまうと、体重は2、3kgふえてしまいます。
そうした点からも、一度に長い時間をやるよりも、1日5分でも股を開いて、継続して股関節を刺激することが効果につながるでしょう。四股踏みも股割りも室内でできます。これからの寒い季節の運動習慣としてお勧めです。

(壮快 2012年1月号より)

BOT
インスリン補給と経口薬併用。糖尿病の新しい治療法。

注射1日1回で効果
インスリンの注射と聞くと、一生薬から離れられないとの印象を持つ人もいるが、そうではない。1日1回の注射で済む、BOT(インスリンの補給と経口薬の併用療法)といわれる新しい治療法が広がり始めた。

不摂生続け、発症
「まさか自分が糖尿病とは」。東京都内在住の大学教授、上野勝久さん(50)は3年前の夏を思い出す。鳥取県の山に学生たちと登ったが、息切れとめまいが激しく、汗がどくどく出て、いまにも倒れそうだった。その後も毎日、口が渇き、就寝中もトイレに頻繁に行く日々が続いた。体重は84キロから72キロに激減した。

たまたま受けた健診で空腹時の血糖値が1デシリットルあたり244ミリグラム(正常値は110ミリグラム未満)、食後は400ミリグラムを超え、「重い糖尿病」と言われた。毎日酒を飲み、夜遅くにラーメンを食べる不摂生を続けていた。上野さんを診た「しんクリニック」(東京都大田区)の辛浩基院長は「すぐ入院して治療が必要な状態だった」と振り返る。しかし上野さんは勤務の都合で入院できず、辛さんがBOT治療を勧めた。

糖尿病になると、まず血糖値を下げる飲み薬が処方され、うまく下がらないと、インスリン注射を始めるのが通常のパターンだ。これに対し、BOTは、インスリンの補給と血糖値を下げる経口血糖降下薬を併用する。

インスリンと聞いて、上野さんは目の前が暗くなった。体がぼろぼろになるイメージを抱いていたからだ。しかし、辛さんは、注射がインスリンを分泌する膵臓の働きを補い、その機能を高めることを説明した。

1カ月後に正常値
上野さんは2008年12月から毎日、朝1回の自己注射と経口薬の服用を始めた。酒もやめ毎食のご飯は1杯にとどめ、野菜を多めにカロリー摂取を抑える食生活を続けた。1カ月後に空腹時の血糖値は105ミリグラムになった。血糖値の1~2カ月間の平均的な目安となるHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー、正常値は5.8%未満)は、3ヶ月間で11.9%から5.8%に下がった。今も6%前後と安定している。
上野さんは「1日1回の注射なので、慣れれば苦労はない」とほほ笑む。辛さんは「膵臓の働きが回復しており、数カ月たてば注射なしで済むかも」と話す。

早めの投与がカギ
糖尿病治療に詳しい鈴木大輔・東海大学医学部准教授によると、過去のデータから、飲み薬だけで血糖値を厳格にコントロールすることは難しいという。

そこで広がり始めたのが、インスリンの効果が24時間続くBOTだ。朝か夜寝る前の注射ですむ特効型インスリンが3年前に登場してこの治療が可能になった。従来は1日に3~4回の注射が必要だった。患者の負担が少なく、血糖値の管理が楽になった。

鈴木さんによると、患者にとってつらい食事制限を徹底させるため、医師が患者を「インスリン漬けになる」と脅すケースもあるという。だが、「インスリンの補給は膵臓の負担を軽くするもの。怖がる必要はない」と認識を改める必要性を強調する。

特効型インスリンと薬の併用によって、半年間でHbA1c値が8.6%から6%に下がった67歳の女性患者を例に挙げながら、鈴木さんは「HbA1c値が7%を超えている場合は、最初からBOTを始めた方が効果的」と話す。薬でうまくいかない場合でも、BOTを試みる価値はあるという。

心臓病で6年前、心臓の血管にステント(血管を広げる金属型の網状チューブ)を挿入した東京都内の取次俊夫さん(76)は、重い糖尿病ながら、1日の食事を1,800キロカロリー以内に抑えながら、2年前からBOTを実践。いまも不動産の仕事をこなす。HbA1c値は9%から7%に下がり、安定している。取次さんを診る辛さんは「76歳で7%ならよい状態だ。受診する糖尿病の患者の約8割はBOTで対処できている。早めのインスリン補給が効果的だ」と話す。

BOT
Basal Supported Oral Therapyの略。主に食前に服用する血糖降下薬(主にスルホニル尿素薬)とともに、インスリンを朝か夜に1回、皮下注射する。インスリン治療の初期段階での適用が一般的。ノック式ペン形注射器で必要な量を注入でき、操作は簡単。注射は主に腹に打ち、痛みを感じない。運動と食事療法は必要だ。

(毎日新聞 2011年10月2日より)

ひと目で分かる「いい医者」「ダメな医者」

糖尿病治療で評判の高いしんクリニックの辛浩基院長も、患者との向き合い方を大切にしている。ここでもう一つのポイントは、「医者が目を見て話をしてくれるか」ということだ。

心の通った診療というのは、目と目を合わすことが基本です。患者さんの目を見ながら会話しないと、相手の訴えに気づきにくくなってしまう。また、仮に話をしなくても、向かい合っていれば、今日はここがつらいんだろうなとか、これを訴えたいんだろうなということが自然にわかるものです」

辛医師のクリニックでは、患者とのコミュニケーションを円滑にするために、触診は欠かさない。そして血圧を測る際は、昔の手動で計るタイプのものを使用しており、カルテはいまだに手書きにしているという。

一方、辛医師が実践しているのは、個々の患者に合わせたオーダーメイド診療である。
「糖尿病は、ただ薬を出せば改善するという病気ではなく、その人の職業や生活環境によっても薬の選び方や指導法が違ってきます。たとえばタクシーの運転手をしていれば食事の時間が不規則で、それも夜中にサンドイッチやおにぎりを食べて済ます人が多い。そういう人に、過血糖を防ぐα-グルコシダーゼ阻害薬という薬を与えると、血糖値は下がるけれども、副作用としてお腹が張るんですね。客商売なのにおならが出ちゃうとまずいので、こういう場合はまた別の薬を出すんですが、患者の職業がわかっていれば、こうした対処ができるわけです」
とくに糖尿病は、一生付き合っていかねばならない病気なので、こうした気遣いが治療を継続させ、悪化させて合併症を引き起こさないための秘訣ともいえる。治療の際、自分の職業や生活パターンまできちんと耳を傾けてくれるか。そこも名医かどうかの分かれ目だろう。

(週刊現代 2011年9月24日号より)

糖尿病1位7割「知らない」

人工透析、失明の原因
健康診断で血糖値が基準値を上回り「要治療」と判定された7割超の人が、人工透析や失明の原因の1位が糖尿病であることを知らないことが、「健康日本21推進フォーラム」(事務局・東京都中央区)の調査で分かった。調査は6月、過去1年間に健康診断を受け、「要治療」と判定された20~60代の男女計500人を対象に実施した。
それによると、「人工透析の原因として糖尿病は何位と思うか」との問いに「1位」と回答したのはわずか29.8%。失明の原因について同様に尋ねてみても、「1位」とした回答者は25.6%にとどまった。
「要治療」の判定を受けた後、医療機関を受診した回答者は77%現在行っている治療内容(複数回答)は「薬物療法(経口薬)」(68%)や「食事療法」(63%)などが多かった。
また、インスリン注射を「糖尿病治療の最後の手段」と考えている回答者は51%に上った。糖尿病専門外来を設けている「しんクリニック」(大田区)の辛浩基院長は「インスリンへの抵抗感は特に高齢者に根強いが、治療の選択肢が増えていることを知って欲しい」とコメントしている。

(産経新聞 2011年9月6日より)

ハイリスク群は800万人超!

甘く考えないで糖尿病専門医が警鐘!!熱中症
猛暑続きにより、熱中症で病院に担ぎこまれる人が、過去最多となった昨年を上回るペースで増え続けている。これからお盆にかけて発症のピークとなるが、「特に糖尿病が強く疑われる血糖値が高い人は熱中症になりやすい」と糖尿病の専門医は注意を促している。

リスク回避にインスリン有効
猛暑が続くと人のカラダは、体温が上がりすぎないよう発汗などで調節するメカニズムが働く。しかし、糖尿病患者(治療を受けていない潜在患者を含む)の場合は、自律神経に狂いが生じて体内に熱がこもりやすくなる。さらには、血液中の過剰な糖分を尿糖として排泄し、排尿回数や量が増えて脱水症状にも陥りやすく、体温を調節するメカニズムが機能しなくなるのだ。都内で糖尿病専門クリニックを開設する辛浩基院長は、「わが国には現在、糖尿病患者と糖尿病が強く疑われる人が890万人いるといわれますが、そのうち実に653万人が治療を受けていません。治療を受けているのに慢性的に血糖値が高い人も7割近くに及び、これらを合わせた熱中症ハイリスク群は812万人にのぼるとみられています」と指摘する。
「糖尿病の人はインスリンを分泌して血糖値を調節するすい臓の働きが弱まっています。熱中症ハイリスク群はその自覚がないため、のどか渇くと砂糖を多量に含むソフトドリンクなどをがぶ飲みするケースが多く、すい臓の疲労に拍車をかけてしまう。その結果、高血糖と脱水が強まり、昏睡状態になったり、糖尿病自体も急激に悪化して失明や足の切断に至ることもあります」
夏場のリスクを乗り切るには、糖分のとりすぎに注意するとともに、「インスリン」をうまく使うことを辛院長はすすめる。「インスリンにはすい臓を休め、本来の働きを回復させる効果があります。飲み薬に加え、1日1回ですむインスリンを使って血糖値をしっかり下げることが重要です」
くしくも7月27日は「インスリン発見の日」。1921年のこの日に無名のカナダ人外科医バンティングらによって発見された糖尿病の有効成分が、90年の時を越えて新たな活躍の場を得たわけだ。

(夕刊フジ 2011年7月28日より)

糖尿病「2000万人の真実」[2]
初期患者なら治る「最新治療」完全ルポ

「東京都大田区の人口は69万人を超えますが、区内の糖尿病専門医は、私を含めて9人しかいません。
専門医は、全国でも約4,300人しかおらず、なかなか増えないまま、患者数が激増しています。糖尿病は、初期こそ専門医にかかるべきですが、それが難しい」(蒲田「しんクリニック」・辛浩基院長)

続いて、「薬」。糖尿病の「薬」の開発は、目覚ましいものがあるという。
そもそも血糖値の抑制に対する考え方自体が変わってきた。
「これまで、血糖値は『下げる』ことを中心に考えられてきましたが、血糖値の乱高下が問題視されはじめました。ただ単に血糖値を下げるだけだと、かえって低血糖のリスクや死亡率が高まることが、米国の大規模臨床試験でも証明された。
さらに、血糖値の急上昇、急降下は体に大きな負担となる。そこで、無理して血糖値を下げるより、“そこそこ”で安定的に推移する方が望ましいとの考え方が出てきた」(前出・辛院長)
そこで血糖値を“緩やかに下げる”新薬が登場する。

さらにインクレチン注射剤でも、「現在は毎日打つのですが、1回打てば効果が1カ月間続く製品の開発が進んでいます。患者の負担は劇的に減る。治験段階ですが、いずれ発売されるでしょう」

「薬にしても、患者によって適切な組み合わせは違ってくる。インスリンの分泌機能が損なわれている患者に、分泌を促す薬が投与されていたケースもある」
その1例として、「ブドウ糖の吸収を抑えるグルコシダーゼは、1日3回飲まなければならず、オナラが出やすくなる。例えばタクシー運転手には向きません。そこまで患者のことを考えるべきなのです」(前出・辛院長)

(週刊文春 2011年7月28日より)

糖尿病にBOT療法脚光

90年前に抽出成功。今日27日は「インスリンの日」
1日1回注射と経口薬を併用
2型が急増

今日27日は「インスリンの日」。90年前の1921年(大10)7月27日、カナダの無名外科医だったF・バンティングらが犬の膵臓(すいぞう)からインスリンの抽出に成功した。その功績で23年のノーベル医学生理学賞を受賞している。
世界で初めてインスリンの注射を受けたのは生まれつき膵臓がインスリンを分泌できない1型糖尿病で生命が危ぶまれていた14歳の少年だった。
この90年間で生活様式は激変し、過食や運動不足による2型糖尿病が急増。最近の統計によれば、全世界で2億4600万人以上が糖尿病に罹患(りかん)し、有効な対策を講じなければ、糖尿病人口は2025年までに3億8000万人に達するとみられている。
日本も例外ではない。最前線で糖尿病患者と向き合うしんクリニック・辛浩基院長(東京・大田区)は、「2型糖尿病の患者数は推定890万人にのぼります。しかし、このうち治療を受けている人は、237万人程度にすぎません。また、治療を受けている人の7割近くがまだ慢性的に血糖値が高い状態にあり、血糖値が良好な人は全体の1割に満たないといわれています」という。この結果、合併症になる人が激増。糖尿病患者は平均寿命よりも、寿命が10~13年も短いことがわかっている。
こうしたなか、急速に浸透しているのがBOT療法と呼ばれる新しいインスリンの使い方だ。1日1回の注射ですむ基礎インスリンと経口薬の併用療法だ。「インスリンには、働き続ける膵臓を休めるリフレッシュ効果がある。膵臓の機能がまだ残っているうちに、できるだけ早期にBOTを始めることで、膵臓が回復しインスリン投与をやめることができる」(辛院長)と助言している。

痛みが少ない注入器も開発
◆BOT療法とは
Basal supported Oral Therapyの略。効果が約20時間持続するインスリン製剤と経口薬を併用する療法。従来のインスリン療法だと、1日に複数回、注射をする必要があり、患者の精神的苦痛も大きかったが、BOT療法で1日1回の注射ですむようになった。針が細く、短いために痛みが少ないペン型インスリン注入器も開発されている。

(日刊スポーツ 2011年7月27日より)

本邦初公開 名医のダイエット

糖尿病治療の名医として知られる「しんクリニック」(東京・大田区)の辛浩基院長(52歳)も、毎日、体重計に乗っている。辛院長は79kgあった体重を、食べ方の工夫など無理なく続けられるダイエット法を組み合わせ、2ヶ月で6kg減らすのに成功した。
「それまではつけ麺にハマっていたんです。でも、炭水化物だけの食事は肥満の原因になる。外食のおすすめは和定食でご飯少な目です。これまでは炭水化物中心の食事をしていた人は、完全に抜かなくてもそれだけで、減量につながります。またビールの原料は麦で、炭水化物ですから、それを控えるだけでも違います。」

「食べる速さ」もポイントだ。栄養の吸収を高める早食いは肥満につながる。よく噛んで時間をかけるのが、太らない食べ方である。
食事面の注意と平行して、辛医師は有酸素運動のやり方にも工夫をこらした。

「僕も一時はジムへ通っていましたが、自宅で手軽に有酸素運動ができる方法はないかと考えて、相撲の四股を10分間、寝る前に踏むことにした。走るよりはカロリー消費は少ないですが、息が上がって有酸素運動になります。腰や股関節のストレッチにもなるし、続けていると足腰がしっかりしてくるのが実感できます」

(週刊現代 2011年3月14日より)

重大病「危険なサイン」を見逃すな!

今なお患者が増え続ける「糖尿病」。厚生労働省によれば、潜在患者も含めると全国に約2,210万人もいるとされ、そのうち4割の人が無治療だという。

糖尿病患者は推定890万人と言われているが厚生労働省の患者調査によれば、糖尿病治療中の患者総数は約240万人。
つまり、糖尿病患者の中で医療機関を定期的に受診している人は4分の1程度なのだ。
しんクリニック(東京・蒲田)の辛浩基院長(糖尿病専門医)が言う。
「人間ドックや健診で血糖値が高いと指摘されていても、重要視せず、病院に行かずに放置している人が非常に多い。糖尿病の治療は最初の10年間がとても重要で、そこを怠れば、次の10年間どんなに必死に頑張っても、進行を止めることは不可能だと言われます。結果、壊疸で足の指や下腿を切断しなければならなくなったり、失明に至ったり、腎不全で人工透析を余儀なくされる人が少なくないのです」

糖尿病の典型的な症状である「喉が渇く」「尿の回数や量が増える」「体がだるく、疲れやすい」「食べているのに痩せてくる」などが1つでも該当する人は血糖値を調べるべきだろう。
また、意外なところから発見されることもある。
文具メーカーの営業のSさん(46)は、ここ数年、亀頭部の後ろの皮膚が赤くなっていた。手で包皮を伸ばすと、皮が痛む。場所が場所だけに、診察してもらうのに躊躇していたが、セックスの時、強い痛みが走るようになったので、しかたなく泌尿器科を受診した。
性感染症の可能性はないという結果だったが、念のために行った血液検査、ブドウ糖負荷試験をすると、空腹時の血糖値が300mg/dlを超える重度の糖尿病が判明した(基準値は110mg/dl未満)。
同じく泌尿器科で糖尿病が判明したのは、設計事務所を経営するBさん(42)。彼は30代後半からED気味で、バイアグラの処方を求めて泌尿器科を受診した。ところが、血液検査を受けると、随時血糖(食後血糖)140mg/dl、ヘモグロビンA1c7%で、糖尿病という診断が下された。
このように、糖尿病が体中にさまざまな影響を及ぼし、それが下半身の異常の要因となっていることも珍しくはない。

EDのほうが先に発症する場合も

辛院長が説明する。「Sさんの場合、糖尿病を抱えている人は一般的に免疫力が低く、皮膚の抵抗力が弱い。そのため炎症や湿疹を起こしやすいのです。ペニスにもともと住みついている菌が、糖尿病で活発に活動するようになり、炎症が起こります。炎症は治りにくく、皮膚の弾力性が低下して、セックスなどのちょっとした刺激で皮膚がひび割れ、これが慢性的になり痛みを感じるようになるのです。ペニスの皮膚に炎症が見られ、続く場合は、原因の一つに糖尿病を疑うべきです。また、BさんのようにEDの背景に糖尿病があるというケースもある。糖尿病が進行すると動脈硬化も進行し、血流が悪くなります。陰茎の血管は細いので、その影響を早く受けやすい。糖尿病のほかの症状より先に、EDが出てくる人もいるのです

アパレル広報のKさん(49)は、行きつけの足ツボマッサージ店の施術師に「足の裏から甘酸っぱいニオイがする。血糖値を調べたほうがいい」と指摘され、内科を受診した。検査の結果、Kさんの空腹時血糖値は400mg/dl近かった。すぐに入院し、糖尿病の治療が必要だと告げられた。「甘酸っぱさは糖尿病患者特有のニオイで、汗や尿から漂います。糖尿病になると、脂肪を分解してできるケトン体が増えて、甘酸っぱいニオイがするようになるからです」(辛院長)

さらに、糖尿病と関係が深い病気としてあげられるのが歯周病だ。
飲料メーカー勤務のUさん(55)は1カ月ほど前から歯茎が痛く、冷たいものを飲むと染みる。痛みがひどい時は物がかめないほどだった。しぶしぶ、歯科医院を訪れると「ひどい歯周病」と言われた。通院して歯周病治療を受けたが、なかなか状態は改善しない。歯科医から内科を紹介され、糖尿病がわかった。

「前述のとおり、糖尿病があると免疫力が低下するので菌が繁殖しやすくなる。これは口の中も同じです。一方、歯周病があると、炎症性物質が多量に分泌され、インスリンの働きを抑制し、血糖コントロールを悪化させる。糖尿病が歯周病を進行させ、また、歯周病が糖尿病を進行させる。歯のトラブルがあれば、糖尿病も併せて疑ったほうがいのです」(辛院長)
糖尿病に限らず、どの病気にも言えることだが、重要なのは早期発見、早期治療だということをあらためて心に留めておきたい。

(アサヒ芸能 2010年12月23日より)

糖尿病診療について

糖尿病は進行すると、合併症として眼や腎臓、神経が冒され、動脈硬化が進み、高血圧・脳卒中・心筋梗塞の原因となります。そのため私たちは、常にその早期発見・早期治療を心掛けており、特に眼は失明に至らぬ様、レーザー光凝固療法も行っております。
日常診療以外にも糖尿病教室を開き、患者さんとのふれ合いの場を持ち、病気に対する理解を深め、医師と患者の信頼関係を築いています。また、専門の栄養士による個人指導を行い、糖尿病治療の基本である食事療法を実践していただき、その上で患者さんに最も適した治療を行います。さらに、院長の出身大学である東邦大学医療センター大森病院と常に連携を取り合っております。

しんクリニックでは、糖尿病の早期発見から合併症の進展防止に至るまでのトータルな診療を提供しております。

今後も、合併症のない常に健康な状態で安心していられるよう、患者さんと手と手を取り合い診療に取り組んでいきたいと思います。

糖尿病は早期発見・早期治療が大切!!

『カルナの豆知識2010年10・11月号』掲載記事
(編集・発行:NPO法人 医療機関支援機構)

取材協力/辛 浩基 院長・しんクリニック
取材・文/松沢 実・医療ジャーナリスト

糖尿病に新たな診断基準―
ヘモグロビンA1cの測定値
を新たに導入

国民の6~7人に1人が糖尿病
糖尿病の患者は年を追うごとに増え、減る兆しがまったく見えません。糖尿病予備群といわれる「境界型」は800万人を超え、糖尿病の患者は2000万人に達しようとしています。国民の6~7人に1人が糖尿病という現実は、恐るべき事態といわねばなりません。
「糖尿病は血液中のブドウ糖=血糖が上手に利用・処理されず、血液中のブドウ糖濃度が高まって、高血糖となる病気です」
簡潔にこう指摘するのは、糖尿病専門医としてその診断と治療の最前線に立つ、JR蒲田駅前の「しんクリニック」(東京都大田区)の辛浩基院長です。
「初めのうちは、ほとんど自覚症状がありません。しかし、次第に尿が多く出るようになったり、喉の渇きや全身倦怠感、痩せてきたりするなどの症状が出てきます。あるいは、症状がまったくないのに、網膜症や腎症、神経障害などの合併症が起こってくることもあります」
また、糖尿病は動脈硬化を進展させ、心筋梗塞や脳梗塞など生死にかかわる病気の原因との関連も明らかになりつつあります。まさに代表的な生活習慣病といえるでしょう。

ヘモグロビンA1cが導入された新たな診断基準
勢いづく糖尿病患者の増加に対して、日本糖尿病学会は今年(2010年)7月、従来の診断基準を改め、早期発見・早期治療のための新たな診断基準を打ち出しました。
「11年目ぶりに診断基準が変わりました。そのポイント=目玉は、過去1~2ヵ月の患者さんの血糖状態のレベルを示す、ヘモグロビンA1c(HbA1C)の値を診断基準に新たに加えたことです」
従来は、(1)早朝空腹時血糖値が126mg/dl以上か、(2)75g糖負荷試験の2時間後測定値が200mg/dl以上か、(3)空腹時や食後などにかかわりなく測った随時血糖値が200mg/dl以上の場合、「糖尿病型」と診断してきました。そして、別の日の2回目の再検査で、いずれかの血糖値(空腹時血糖値・75g糖負荷試験2時間後測定値・随時血糖値)が「糖尿病型」と診断されれば、最終的に「糖尿病」と確定診断されてきました。
「しかし、新たな診断基準では血糖値が『糖尿病型』と診断され、ヘモグロビンA1cが6.1%以上なら『糖尿病型』と診断し、両者の結果をあわせて最終的に『糖尿病』と確定診断する、と変更されたのです」
すなわち、従来は初回検査と再検査、別の日の2回の採血=血液検査で「糖尿病」と診断していましたが、新たな診断基準では同じ日の1回の採血=血液検査で「糖尿病」と確定診断できるようなりました。これにより、糖尿病のすみやかな診断が可能となり、早期に治療が始められる患者が増えるだろうと期待されています。

ヘモグロビンA1c6.1%以上は糖尿病型
これまではヘモグロビンA1cが5.8~6.5%未満ならば、血糖のコントロールは「良好」とされてきました。その一方でヘモグロビンA1cが6.5%以上ならば「不十分」とされ糖尿病と判断されてきましたが、新たな診断基準では先述したように6.1%以上を「糖尿病型」と診断するようになったのです。網膜症の出現などとの関連を検討したところ、6.1%以上を「糖尿病型」と診断するのが妥当であると判断されたからです。
ただし、初回検査と再検査の両方でヘモグロビンA1cが「糖尿病型」というだけでは、「糖尿病」と診断されません。それに加えて血糖値のいずれかの検査で「糖尿病型」と診断されない限り「糖尿病疑い」にとどまり、「3~6ヵ月以内の再検査」が必要と判定されます。

インスリンの分泌を促進するホルモン=GLP-1にかかわる画期的新薬
急増する糖尿病に対して、新たな治療薬も登場しました。DPP-4阻害剤とGLP-1注射製剤の2つがそれです。
「DPP-4阻害剤とGLP-1注射製剤は、いずれも食事をした後、小腸下部のL細胞から分泌されるGLPI-1(グルカゴン様ペプチド1)というホルモンに関係する新たな糖尿病治療薬です」
GLP-1は小腸の下部から血液中に放出され、門脈→肝臓→全身をめぐって膵臓へ行き着き、膵臓のβ細胞に働きかけてインスリンを分泌させるホルモンです。食後に腸管から放出され、膵臓のβ細胞に作用してインスリンを分泌させるホルモンの総称をインクレチンと呼びます。GLP-1は代表的なインクレチンの1つなのです。
「GLP-1は膵臓のβ細胞に働きかけてインスリンの分泌を促しますが、血糖値が高いほどインスリンの分泌量を増やす一方、血糖値が下がって低下するとインスリンの分泌量を減少させます」
つまり、GLP-1は血糖値の状態に即して、上手にインスリンを分泌させるところに大きな特長があるのです。

活性型GLP-1を増やすDPP-4阻害剤
GLP-1は血糖値の状態に応じてインスリンを分泌させる重要なホルモンなのですが、小腸下部から血液中に分泌されるや否や、その大半が分解され非活性型GLP-1へと変化してしまいます。
活性型GLP-1が活性を失い非活性型へと変化してしまうのは、同じ小腸下部のごく近くの血管の中に存在するDPP-4という酵素が活性型GLP-1を分解―不活化させてしまうからです。小腸から門脈、肝臓を通過するまでに当初の約20%に減少し、膵臓のβ細胞まで行き着いてインスリンの分泌を促す活性型GLP-1は約10%にとどまるといわれます。
「糖尿病の新薬として大きな注目を浴びているDPP-4阻害剤は、活性型GLP-1を分解-不活化するDPP-4(酵素)の働きを妨げる薬です。そして、膵臓のβ細胞へ行き着く活性型GLP-1を増やすことで、インスリンの分泌を促進させる糖尿病治療薬なのです」
日本で発売されたDPP-4阻害剤の第一号は、昨年10月に厚労省から承認された「ジャヌビア(MSD製薬)」(一般名:シタグリプチン)と「グラクティブ(小野薬品)」(同)です。次いで今年の1月に「エクア(ノバルティスファーマ)」(一般名:ビルダグリプチン)、6月に「ネシーナ(武田薬品)」(一般名:アログリプチン)が発売されました。

膵臓のβ細胞を増やすという画期的作用も
GLP-1を増やすDPP-4阻害剤は、糖尿病の画期的新薬と高く評価されています。
「第1にDPP-4阻害剤は、これまでのインスリン製剤やスルフォニル尿素剤(SU剤)などと異なり、低血糖を招きにくいという大きな特長があるからです」
低血糖は糖尿病の薬物治療中に、血糖値を下げすぎて生じる状態です。動悸や震え、脱力感などの症状に襲われるだけではなく、ひどいときは昏睡から死を招くこともあります。
しかし、DPP-4阻害剤の服用によって増加するGLP-1は、高血糖のときはインスリンの分泌量を増やしますが、血糖値が低くなると膵臓のβ細胞に対する作用を弱めます。そのためインスリンの分泌量も減少し、低血糖が生じにくくなるという優れた調整作用を有しているからです。
「DPP-4阻害剤が糖尿病の画期的新薬といわれる第2の理由は、GLP-1が膵臓のβ細胞の増殖を促す一方、β細胞の死滅を抑える作用を持っているからです」
これまでは膵臓のβ細胞が一旦減少すると、それを増やしたりする薬はありませんでした。β細胞の増殖が促されるのであれば、最終的に正常な状態に戻せる可能性も出てくるかもしれません。
「ほかにDPP-4阻害剤は、食欲を抑える働きや、心臓の心筋を保護する作用など二次的な付加価値、メリットのあることも判明しています」

DPP-4に分解されにくいGLP-1注射製剤
DPP-4阻害剤とともに糖尿病の新薬として期待されているGLP-1注射製剤は、小腸下部のL細胞から分泌されるホルモン=GLP-1と同じインスリン分泌促進作用を持ちながら、DPP-4によって分解-不活化されにくい構造を持った薬です。膵臓のβ細胞のGLP-1受容体に結合し、インスリンが分泌されることから、GLP-1受容体作動薬とも呼ばれます。
「日本では国内初のGLP-1受容体作動薬として今年の6月から「ビクトーザ(ノボノルディスクファーマ)」(一般名:リラグルチド)が発売され、8月には「バイエッタ(日本イーライリリー)」(一般名:エクセナチド)が、2番目のGLP-1受容体作動薬として厚労省から承認されました」
いずれもヘモグロビンA1cを強力に下げる効果のあることが、臨床試験によって確かめられています。ただし、DPP-4阻害薬と比べると吐き気や嘔吐などの副作用が少なくない、と報告されています。ビクトーザは1日1回、バイエッタは1日2回注射しなければなりません。

従来の経口薬と組み合わせ、より効果的な血糖コントロールを
現在、糖尿病の治療薬としてはsu剤をはじめ、a-グルコシダーゼ阻害薬、ビグアナイド製剤、インスリン抵抗性改善薬、速効型インスリン分泌促進薬などの経口血糖降下薬や、各種のインスリン製剤があります。それにDPP-4阻害剤とGLP-1注射製剤が加わり、薬物療法の幅が大きく広がったといえます。
「DPP-4阻害剤とGLP-1注射製剤は、適切に使用すれば切れ味の鋭く、かつ安全性の高い薬です」
今後はこれまでの経口血糖降下薬とうまく組み合わせ、より効果的に血糖をコントロールし、糖尿病性網膜症をはじめとする合併症や心筋梗塞、脳梗塞の予防に努めることが求められています。

辛浩基 院長(しん・こうき)
東邦大学医学部卒業後、同大学医学部附属大森病院第2内科入局、1997年「しんクリニック」開業。日本内科学会認定医、日本糖尿病学会認定医。東邦大医学部内科非常勤講師、日本工学院専門学校理学療法科講師、蒲田医師会理事。眼科も併設し、糖尿病性網膜症の有無やその進行に注意を怠らないため、糖尿病で失明した患者は1人もいない。栄養指導教室や「しんクリニック歩こう会」という患者会では散策運動療法なども積極的に行っている気鋭の糖尿病専門医として広く知られている。

しんクリニック
〒144-0051 東京都大田区西蒲田7-5-11ツユキビルM5F TEL.03-3738-1112

血糖正常化への道のり~インスリン治療の次の1手~

Medical Tribune 2010年9月9日特別企画
提供:サノフィ・アベンティス株式会社
LANTUS Forum in Tokyo

演者 寺内 康夫 氏
横浜市立大学大学院分子内分泌・糖尿病内科学 教授

座長 綿田 裕孝 氏
順天堂大学代謝内分泌学 教授

2型糖尿病の治療において、経口血糖降下薬による血糖コントロールか不十分な場合、インスリン治療の導入が検討される。しかし、わが国では導入のタイミングが遅れがちなことに加え、血糖コントロール不良にもかかわらず次の治療法に切り替えられないままの患者さんも多い。
本フォーラムでは、横浜市立大学大学院分子内分泌・糖尿病内科学教授の寺内康夫氏が、経口血糖降下薬と基礎インスリンを併用するBasal supported Oral Therapy(BOT)から始まりBasal Plus, Basal Bolusと進むインスリンによる段階的治療構築の必要性について論じた。

インスリン導入が遅れるわが国の治療の現状

わが国の2型糖尿病患者は、増加の一途をたどっている。それに伴ってインスリン導入例も増えているが、一般臨床医および糖尿病専門医を対象にした血糖管理状況に関するアンケート調査によると、インスリン治療を行っている糖尿病患者の平均HbA1c※は7%台半ばと、行っていない患者の6%台後半よりも有意に高く(P<0.0001,Student’s t-test)、一般臨床医と専門医の患者間で有意な差は認められなかった(Arai K, etal.Diabetes Res Clin Pract2009; 83: 397-401)。
このような現状を踏まえ、寺内氏はわが国のインスリン導入の現状を調査したCANDO試験を紹介した。同試験によると、多くの患者はHbA1c※8.1~9.0%の時点で医師からインスリン治療を推奨されるものの、実際の導入期のHbA1cはそれよりやや高い8.1~10.0%というケースが多かった(図1)。このように、わが国では全体的にインスリン導入が遅れており、同氏は「大きな問題である」と指摘した。
同試験ではインスリン導入後、多くの患者が「思ったよりも注射は難しくなかった」、「もっと早く開始すればよかった」と気持の変化を経験している。同氏は「患者のインスリン治療への抵抗感を軽減し、適切な時期に治療を開始するメリットをしっかりと伝える必要がある」とした。

目標値達成にはインスリン導入のタイミングが重要

インスリン治療においては、低血糖を来さず、可能な限りHbA1cを正常に近付けることが求められる。しかし、HbA1c※9.0%の時点でインスリンを導入し、1.0%低下させたとしても、治療目標である6.5%未満に到達しないのであれば、それは導入が遅すぎたことになる。
寺内氏らが自施設で実施した検討では、新たにインスリン療法を導入する2型糖尿病患者を、強化療法群と混合型インスリン製剤2回投与群の2群に分け、血糖の変化を比較した。その結果、12週後には両群ともHbA1c※が切り替え前の10.0%程度から7.0%程度まで低下し、インスリン療法による血糖改善効果が示されたものの、強化療法群においても6.5%未満には低下しなかった(Nezu U,et al. Endocr J 2009; 56: 193-200)。
同氏はこの結果を踏まえ「目標値到達のためには導入時期が重要であるとともに血糖コントロールが不十分な場合、次の一手としてどのようにインスリン治療を行っていくかが大事である」と段階的な治療の重要性を強調した。

4-T Studyから考えるインスリン導入と段階的治療

2型糖尿病の治療では、定期的に治療を見直すことにより血糖コントロール不良の時期をできる限り短くすることも求められる。現在、欧米における治療戦略の主流は、食事療法および運動療法で治療を開始し、コントロール不良であれば薬物療法、それでも不十分の場合はまず基礎インスリン療法から導入し、さらには頻回インスリン療法に進むという段階的治療である(Del Pratos,etal. Int Clin Pract 2005; 59: 1345-1355)。
そこで、寺内氏は段階的な治療の参考例として、4-T Studyを紹介した。同試験は、基礎インスリンによるBOT、混合型インスリン2回/日投与、追加インスリン3回/日投与の3種類の異なるインスリン療法導入とその後の段階的治療を検討している。
同試験では、経口血糖降下薬で効果不十分な2型糖尿病患者708例を、超速効型インスリン3回/日投与群(超速効型群)、混合型インスリン2回/日投与群(混合型群)、持効型インスリン1~2回/日投与群(持効型群)にランダム化し、HbA1cの推移を3年間追跡した。試験開始1年後に血糖コントロールの改善が不十分〔HbA1c(NGSP値)6.5%未満〕であった場合は、次の一手として超速効型群には就寝前に持効型インスリン、混合型群には昼食前に超速効型インスリン、持効型群には毎食前に超速効型インスリンをそれぞれ追加した。
その結果、次の一手を打った3年後のHbA1cの変化度は3群とも同程度であったが、HbA1c(NGSP値)6.5%以下の達成率は、持効型群で43.2%、超速効型群で44.8%、混合型群で31.9%となり(図2)、混合型群に対し、持効型群、超速効型群の達成率は高かった。持効型群は低血糖発現頻度、体重増加率とも他の2群より低かったことから、基礎インスリンで治療開始するほうが有益であることが示唆された。

混合型製剤からの強化療法へのステップアップ

わが国では混合型インスリンからの導入が多いが、混合型インスリンには、「インスリン治療に生活を合わせる必要がある」、「用量の調節がわかりづらい」、「低血糖のため増量しづらい」、「攪拌作業による効果のばらつきがある」などの問題点がある。さらには、血糖コントロールが不十分な場合に全く違う製剤を使った治療法に変更する必要があるため、外来での強化療法への変更が難しいとされている。
そこで寺内氏は、混合製剤でコントロール不良例の段階的治療として持効型インスリン製剤のインスリングラルギン(遺伝子組み換え、以下グラルギン)を用いた強化療法への切り替えを検討したGINGER Studyを紹介した。対象は、混合型インスリン2回/日とメトホルミン併用療法でコントロール不良の2型糖尿病患者310例。これらをグラルギン/インスリングルリジン(遺伝子組み換え、以下グルリジン)群(グラルギン1回/日就寝時、グルリジン毎食前:153例)、混合型インスリン群(2回/日:157例)にランダム化し、52週間追跡した。
その結果、HbA1c(NGSP値)は混合型群においてはベースラインの8.51%から7.71%と0.8%低下し、グラルギン/グルリジン群ではベースラインの8.62%から7.31%と1.3%の低下を示した。血糖目標達成率〔HbA1c(NGSP値)7.0%以下〕は混合型群の27.9%に比し、グラルギン/グルリジン群で46.6%と有意に高かった(P=0.0004,ANCOVA)。また、低血糖発現頻度やインスリン投与量の変化には両群間で差が見られなかった(Fritsche A, et al. Diabetes Obes Metab 2010; 12: 115-123)。
以上から、グラルギン/グルリジン群は有効な治療法であることが示唆されたが、体重は増加しており、同氏は「臨床においては血糖改善と体重変化のメリットとデメリットをよく見極めることが大切だ」と述べた。

グラルギンへの切り替えで低血糖の質が変化

続けて寺内氏は、混合製剤でのコントロール不良例からBOTに切り替えた大工原らの検討を紹介した。
同検討の対象は、混合型インスリン2回/日投与で12週以上にわたりHbA1c※7.0%以上であった2型糖尿病患者110例。これらを、混合型製剤の1日投与量の80%相当量でグラルギン1回/日投与に切り替え、グラルギン投与量は空腹時血糖110mg/dLを目標に調節し、16週にわたって追跡した。
経口血糖降下薬はスルホニル尿素(SU)薬グリメピリド0.5~3.0mg/日およびメトホルミン250~750mg/日。患者背景は平均年齢55.4±14.1歳、平均BMI24.9±4.7、平均罹病期間9.9±7.1年、平均インスリン治療期間6.2±4.0年、平均混合型インスリン投与量は22.8±9.8単位であった。
その結果、平均空腹時血糖値は146mg/dLから113mg/dLに平均HbA1c※も7.6%から6.8%に有意に低下した(図3)。
同氏は、同検討において重要なポイントは110例中62例(56%)がHbA1c※6.9%以下を達成したことと指摘。また、切り替え前と比べて体重は1.3kg減少、インスリン投与量は2.8単位増量した。低血糖の発現は18件であった。さらに低血糖の質が「ゆっくり来る」、「倒れない」、「自分で対処できる」というように変化していることも注目されるという。
混介製剤からグラルギンに切り替える段階的治療の目安については、弘世らがまとめている。これによると、グラルギンヘの切り替え開始量は前治療の1日投与量の約70%で、グリメピリド1.0mg/日を併用する。目標空腹時血糖値110mg/dLを達成しているにもかかわらずHbA1c※7.0%以上の場合は、次なる段階的治療として追加インスリンを3単位/回から開始すること提唱している。

BOT,Basal Plus,Basal Bolusへと続く“次の一手”

グラルギンを用いた治療アルゴリズムを検討したAT.LANTUS studyのサブ解析では、混合型インスリン治療でコントロール不良の2型糖尿病患者686例をグラルギン1回/日就寝前と経口血糖降下薬群(384例)、それに追加インスリン1回/日を加えた群(21例)、追加インスリン2回群/日(116例)、追加インスリン3回群/日(165例)の4群間でHbA1c(NGSP値)の推移を検討した。なお、切り替えの際の用量は、混合型インスリンの約2割減から開始して調整した。
その結果、HbA1c(NGSP値)減少率は、グラルギン群の0.67%に対して追加インスリン1回群1.22%、2回群1.61%、3回群1.43%であり、基礎インスリン療法の次なる段階的治療として追加インスリンの回数を増加する強化インスリン療法は有用であることが示唆された(Davies M,etal. Diabetes Res Clin Pract 2008;79: 368-375)。空腹時血糖値は4群とも有意な低下が見られたが、追加インスリンが増えるとともに体重の増加も大きくなるので、その点は注意が必要という。
寺内氏は総括として、インスリン療法においては最終的に強化療法に進むことを意識して段階的治療を構築することが重要であると強調し(図4)、「現在、混合型インスリンで導入してコントロールが不十分な患者さんがおられることも事実であり、それに対する次の一手として、基礎インスリンに切り替えるBOT、さらにはBasal Plus, Basal Bolusへと進めていくことを1つの治療選択肢として考慮すべきである」と講演をまとめた。

Voices of participating doctors(参加者の声)

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適切な血圧管理を求めて

Medical Tribune 2010年12月16日 特別企画
提供:ファイザー株式会社
東東京エリア編

本特別企画はファイザー株式会社の提供です

脳心血管イベント発症抑制を目指して、高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)に準じた高血圧治療が実践され、臨床実績が蓄積されつつある。
そんな背景の下、わが国でも長時間作用型Ca拮抗薬「ノルバスク(R)10mg錠」が発売された。
「ノルバスク(R)10mg錠」が発売された。
アムロジピン10mg/日の使用経験をもとに、第一線で活躍する高血圧治療エキスパート各氏に語り合っていただいた。

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降圧目標値の達成率は、合併症があると厳しく、病態に応じた降圧と、患者さんへの治療啓発が必要

小川 わが国における高血圧と脂質異常症治療の実態を調べたJ-GAP2によると、高血圧患者さんの約半数はコントロール不十分でした。さらに病態別にみると、高齢者は良好にコントロールされているものの、若・中年者や、糖尿病、腎疾患、心筋梗塞といった合併症例では、1/4程度しか降圧目標に到達していません(図1)。J-GAP2の結果を、皆さんの臨床実感と比べるといかがですか。
冨地 私の施設では、高齢者と若・中年者の割合はおおむね半々です。降圧目標値は、高齢者では8割が達成されていまが、若・中年者や、糖尿病、心疾患、慢性腎臓病(CKD)を合併した患者さんの場合は、いずれも約半数と、血圧コントロールは十分ではありません。
田村 私の施設では、J-GAP2と同程度です。高齢者は生活が規則正しく、高血圧治療の認識がかなり高い人が少なくありません。毎日、家庭血圧を測定・記録されたり、治療意欲が高い方は、コントロールも良好です。
一方、若・中年者は仕事が忙しく、生活が不規則なため、服薬コンプライアンスが悪い傾向があります。中には、まだ治療が必要ではないと考えている方も案外多く、大きな問題です。
山上 近年、降圧目標達成率は向上しており、私の施設では、6~7割がコントロール良好です。
しかし私が専門としている腎臓病や糖尿病を合併している高血圧患者さんでは、早期からの十分な治療に同意が得られない、治療薬の選択が難しいなどの問題から、4割程度しかコントロールできていないのが実状です。
 私も糖尿病が専門です。糖尿病合併高血圧患者さんに対しては、臓器保護や蛋白尿の改善を期待してARBを投与していますが、単剤では降圧目標を達成するのが難しく、通常、多剤を併用しています。併用薬としては、降圧効果と医療経済面を考慮して、主にアムロジピンを使っています。
山上 JSH2009では、ARBが糖尿病合併高血圧の第一選択薬になっていますが、単剤では降圧目標達成は難しいですね。降圧効果を考えると、アムロジピンは極めて有効な降圧薬だと思います。
田村 血圧コントロールに難渋する患者さんには、脳心血管疾患を合併している方が多く含まれます。アムロジピンでしっかり血圧をコントロールすることは、臓器保護に結び付くと思います。
小川 糖尿病や心疾患といった合併症があるとコントロールが難しく、そのため、降圧効果を重視して、アムロジピンが使用されているようですね。

≪図1≫
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アムロジピンは高い血圧をしっかり下げ、低い血圧は下げすぎない、適切な降圧効果を有する薬剤

小川 降圧目標の達成には、厳格な降圧力が求められます。その実現を目指して、アムロジピンは、2009年に10mg/日までの増量が承認されました。アムロジピンの実臨床での有用性を確認した、SUPER10(the research to substantiate the power of amlodipine 10mg)では、アムロジピン5mg/日から10mg/日への増量によって、収縮期血圧がさらに10mmHg以上低下しベースラインの血圧別の降圧度では、高い血圧はきちんと下げ、低い血圧は下げすぎないという結果が報告されています(図2)。
山上 私も160mmHgを超える症例では、アムロジピンを10mg/日まで増量し、SUPER10と同様の降圧効果を実感しています。ただ、アムロジピンを10mg/日まで増量するか、他の降圧薬を併用するかは、合併症を勘案して判断しています。
 アムロジピン10mg/日は、高い血圧でも2週間ぐらいでしっかり下げてくれる、スムーズな降圧力が認められます。実臨床では、降圧効果を実感してもらうことが、患者さんとの信頼関係の構築に不可欠なので、降圧効果の手応えを比較的速やかに体感することができ、降圧目標の達成が期待できる、優れた降圧力を持つアムロジピンは、ファーストチョイスと考えています。
田村 低い血圧でも過降圧が起こりにくいのは、実臨床では、とても有意義ですね。一方、循環器疾患を持つ患者さんの場合は、高い血圧が脳心血管イベントの発症に関与するというエビデンスが数多く報告されていますので、私は、早期からの厳格な降圧を重視しています。
まず、血圧を下げるために必要な用量の降圧薬を投与し、それから用量の調整や、併用を考慮しますが、アムロジピンはその基本薬として有用ですね。
冨地 私は実際には、SUPER10で示された、収縮期血圧130~140mmHg程度の高血圧にアムロジピン10mg/日を投与した経験はありませんので、この研究での過降圧が起こりにくいという結果は、興味深いです。5mg/日で下がった血圧は維持されたままで、10mg/日に増量すれば、さらなる降圧効果が望めるのですから、非常に使いやすい降圧薬だと思います。


≪図2≫
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アムロジピンは、服薬時間にかかわらず、安定した高圧を現出する

小川 アムロジピンは血中半減期が39時間と長い降圧薬ですが、最近、アムロジピンを朝、夕、就寝前のいずれに服薬しても、降圧効果が変わらないという報告が出ました(図3)。この結果からは、早朝高血圧やnon-dipper, dipper, riserといった血圧の日内変動がある患者さんでも、安定した降圧効果が望めると示唆されますね。実臨床での印象はいかがですか。
冨地 私は、家庭血圧のコントロール状況が不十分であれば、副作用に留意しながら、アムロジピン5mg/日を10mg/日まで漸増しています。増量時には、朝・夕に分けて投与することもありますが、先ほどのデータのように早朝の高い血圧をしっかり下げ、夜間の過降圧の心配がなければ、朝1回の投与を検討したいと思います。
 私は、早朝高血圧を抑えるために、患者さんによってはアムロジピン5mgを朝・夕2回投与することがあり、患者さんに合わせて決めています。
田村 私は、アムロジピン5mg/日とARBの併用で降圧不十分な症例に、10mg/日まで増量していますが、今までは、早朝高血圧のような血圧の日内変動がある場合は、アムロジピン5mgを朝・夕2回で処方していました。しかし、朝1回でも血圧コントロール状況は変わらないことが分かってきたので、最近は朝1回、5mg錠を2錠にしています。このデータは、私の処方の裏づけになりますね。血圧の日内変動を安定させるためには、アムロジピンに利尿薬やその配合剤、抗アルドステロン薬を併用することも有効だと思います。
小川 皆さんは、どのような場合に併用療法を行っていますか。
 私は難治性の高血圧にアムロジピンと抗アルドステロン薬を併用しています。
山上 モーニングサージがある場合、アムロジピン5mg/日に、αブロッカーか利尿薬の併用を検討します。ARBは十分な降圧効果が得られないことや、心筋梗塞などの副作用が懸念されることから、使用を躊躇することがあります。
田村 アムロジピンは狭心症の治療薬でもありますから、心臓への悪影響を考える必要はなく、安心して使えますね。
小川 確かに心筋梗塞の患者さんの半数以上が高血圧を合併しているので、心臓に負担をかけないことは重要だと思います。
 私の経験では、アムロジピンは1Omg/日への増量時の副作用が少ないと感じています。安全性の面からも、アムロジピンは使いやすいですね。


≪図3≫
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アドヒアランスの改善と、降圧目標達成を目指した治療に、「ノルバスク(R)10mg錠」は大きな期待

小川 この度、ノルバスク(R)10mg錠が発売されました。みなさんは何を期待して、どのような患者さんに処方しますか。
冨地 まずは、若・中年者でII度以上の高血圧(160/100mmHg以上)に使います。そして、年齢や合併症を考慮して、より良い血圧コントロールを目指した使い方をしたいと思います。
 働き盛りの年代では、朝1回の服薬で十分な降圧効果が得られることが、治療意欲の継続に必須です。ノルバスク(R)10mg錠は、1錠でそれが期待できるので、アドヒアランスや医療経済面でも、スタンダードな処方になっていくと思います。
また、10mg錠は、用量が2倍になっても、剤型は5mg錠とほとんど変わらない大きさなので、患者さんに服薬の負担がかからず、勧めやすいですね。
田村 私の施設では、患者さんは平均2.5剤を服用していますが、血圧のコントロールが不十分な場合は、ノルバスク(R)5mg錠を1錠増やしていました。ノルバスク(R)10mg錠の登場で5mg2錠が10mg1錠になり、かつ服薬時間も選ばずに服用できるので、服薬コンプライアンスが大きく改善し、それがひいては、降圧目標達成率の向上につながると期待しています。さらに血圧の日内変動がある場合は、ノルバスク(R)10mg錠をベースとして、レニン・アンジオテンシン・アルドステロンや食塩の関与を考慮しての、RAA系降圧薬や利尿薬の併用を考慮すれば、安定した血圧コントロールができると思います。
山上 私の場合は、今までは、アムロジピン5mg/HにARBを併用することが多く、10mg/日まで増量するケースはあまりありませんでしたが、みなさんのお話を伺って、10mg錠をぜひ試して、さらなる降圧目標達成を目指したいと考えています。
小川 錠剤数を増やすことなく、かつ適切な降圧力を持つノルバスク(R)10mg錠の登場は、アドヒアランスの改善や降圧目標値達成を実現すると期待できますね。今後の高血圧治療に有力な降圧薬が登場したと歓迎しています。