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本格的に寒くなる前に知っておきたい…冬の「血圧上昇」と「糖尿病」のこと
2024年10月26日(土)日刊ゲンダイデジタル「本格的に寒くなる前に知っておきたい…冬の「血圧上昇」と「糖尿病」のこと」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/362527
長寿社会だからこそ気をつけたい…高齢者に多い「緩徐進行1型糖尿病」
2024年10月18日(金)日刊ゲンダイデジタル「長寿社会だからこそ気をつけたい…高齢者に多い「緩徐進行1型糖尿病」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/362111
若い女性の活動量が低下している…「妊娠糖尿病」に気をつけろ
2024年10月11日(金)日刊ゲンダイヘルスケア「若い女性の活動量が低下している…「妊娠糖尿病」に気をつけろ」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/361789
「睡眠時無呼吸症候群」は糖尿病治療で治す… 実は合併率が高い
2024年10月04日(金)日刊ゲンダイヘルスケア「「睡眠時無呼吸症候群」は糖尿病治療で治す… 実は合併率が高い」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/361438
糖尿病を「手術」で治す…膵臓移植はいまどうなっているのか
2024/09/13(金)日刊ゲンダイデジタル「糖尿病を「手術」で治す…膵臓移植はいまどうなっているのか」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/360510
世界初の週1回持続型インスリン注射は糖尿病患者にどんな変化をもたらす?
2024/08/29(木)日刊ゲンダイデジタル「世界初の週1回持続型インスリン注射は糖尿病患者にどんな変化をもたらす?」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/359772
特別企画1 気を付けよう!夏の低血糖
月刊 糖尿病ライフ「さかえ」7月号(2024 Vol.64 No.7 編集.発行 日本糖尿病協会)に2024年7月16日に掲載されました。
https://www.shinclinic.jp/wp-content/uploads/20240815-1.pdf
「インスリンボール」ができたときの注意点…重度の糖尿病患者が知っておくべきこと
2024/07/25(木)日刊ゲンダイデジタル「インスリンボールができたときの注意点…重度の糖尿病患者が知っておくべきこと」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/358080
大人気の2型糖尿病の飲み薬が引き起こす性感染症リスク 心血管イベントや死亡率は減少するが…
2024/07/18(木)日刊ゲンダイデジタル「大人気の2型糖尿病の飲み薬が引き起こす性感染症リスク 心血管イベントや死亡率は減少するが…」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/357745
糖尿病と自殺・事故リスク…70歳定年時代に備えて知っておきたいこと
2024/07/11(木)日刊ゲンダイデジタル「糖尿病と自殺・事故リスク…70歳定年時代に備えて知っておきたいこと」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/357431
「ヒヤリ・ハット」が多発する梅雨の歩道…糖尿病の人は特に注意が必要
2024年07月04日(木)日刊ゲンダイデジタル「「ヒヤリ・ハット」が多発する梅雨の歩道…糖尿病の人は特に注意が必要」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/357087
若年層にも急増中…「糖尿病性白内障」に気をつけろ
2024年06月13日(木)日刊ゲンダイデジタル「若年層にも急増中…「糖尿病性白内障」に気をつけろ」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356582/3
世界に先駆けて日本で発売された ミトコンドリアに作用する糖尿病新薬の評判
2024年06月06日(木)日刊ゲンダイデジタル「世界に先駆けて日本で発売された ミトコンドリアに作用する糖尿病新薬の評判」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356550
お酒が糖尿病に与える影響 摂取量に関係なく有害との見解もあるが…
2024年05月17日(金)日刊ゲンダイデジタル「お酒が糖尿病に与える影響 摂取量に関係なく有害との見解もあるが…」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356465
蒸し暑い夏が到来…糖尿病の「水虫対策」はどうすべきか
2024年05月09日 (木)日刊ゲンダイデジタル「蒸し暑い夏が到来…糖尿病の「水虫対策」はどうすべきか」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356614
初夏だからこそ気をつけたい糖尿病の熱中症…暑熱順化が不十分
2024年05月02日(木)日刊ゲンダイデジタル「初夏だからこそ気をつけたい糖尿病の熱中症…暑熱順化が不十分」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356384
急増する1型糖尿病…なぜ、子供や若者に増えているのか?
2024年04月26日(金)日刊ゲンダイデジタル「急増する1型糖尿病…なぜ、子供や若者に増えているのか?」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356364
糖尿病の人は「心房細動」に気をつけろ…脳梗塞や心不全を招く
2024年04月18日(木)日刊ゲンダイデジタル「糖尿病の人は「心房細動」に気をつけろ…脳梗塞や心不全を招く」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356334
糖尿病患者の3割が罹患する「慢性便秘」は命にかかわる病気…死亡リスク20%増との報告も
2024年4月11日(木)日刊ゲンダイデジタル「糖尿病患者の3割が罹患する「慢性便秘」は命にかかわる病気…死亡リスク20%増との報告も」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356304
トイレでわかる糖尿病…「尿糖試験紙」を尿に浸すだけ 早く見つければ治すことも可能
2024年4月4日(木)日刊ゲンダイデジタル「トイレでわかる糖尿病…「尿糖試験紙」を尿に浸すだけ 早く見つければ治すことも可能」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356280
2型糖尿病なら注目したい 慢性腎症リスクを低下させる飲み薬
2024年3月14日(木)日刊ゲンダイデジタル「2型糖尿病なら注目したい 慢性腎症リスクを低下させる飲み薬」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356204
やせる糖尿病薬「SGLT2阻害薬」の意外な副作用…多血症との関係
2024年02月29日(木)日刊ゲンダイデジタル「やせる糖尿病薬「SGLT2阻害薬」の意外な副作用…多血症との関係」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356150
新インスリン治療「BPT療法」は何がすごい?
経口薬への切り替えも可能に
2024年2月22日(木)日刊ゲンダイデジタル「新インスリン治療「BPT療法」は何がすごい? 経口薬への切り替えも可能に」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356121
低血糖リスクのある人は知っておきたい「バクスミー」の効果と限界
2024年2月15日(木)日刊ゲンダイデジタル「低血糖リスクのある人は知っておきたい「バクスミー」の効果と限界」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356093
イヤホン難聴でインスリン注射に、耳の治療で血糖値が急上昇…糖尿病とその予備軍は要注意
2024年2月7日(水)日刊ゲンダイデジタル「イヤホン難聴でインスリン注射に、耳の治療で血糖値が急上昇…糖尿病とその予備軍は要注意」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356056
糖尿病の人は「帯状疱疹」を発症しやすい…50歳以上は要注意
2024年01月25日(木)日刊ゲンダイデジタル「糖尿病の人は「帯状疱疹」を発症しやすい…50歳以上は要注意」の題で院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/356005
正月明けに急増する! 脂肪肝が気になる人は「FIB-4 index」の利用を
2024年01月11日(木)日刊ゲンダイデジタルへ(正月明けに急増する! 脂肪肝が気になる人は「FIB-4 index」の利用を)の題で院長記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/355953
おせち料理は糖質たっぷり…「お正月糖尿病」を避けるにはどうしたらいい?
2023年12月31日(日)日刊ゲンダイデジタルへ(おせち料理は糖質たっぷり…「お正月糖尿病」を避けるにはどうしたらいい?)の題で院長記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/355930
糖尿病治療で血糖値が大幅に下がると「遠視」になるのか?
2023年12月28日(木)日刊ゲンダイデジタルへ「糖尿病治療で血糖値が大幅に下がると「遠視」になるのか?」の題で院長記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/355917
糖尿病は“治る”時代…
2023年12月6日(水)日刊ゲンダイデジタルへ「糖尿病は“治る”時代…」の題で院長記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/355840
「モーニングサージ」に気をつけろ
2023年11月30日(木)日刊ゲンダイデジタルへ「「モーニングサージ」に気をつけろ」の題で院長記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/355813
糖尿病患者が治療を中断すると何が起こる?#GLP-1受容体作動薬
2023年11月23日(木)日刊ゲンダイデジタルへ「糖尿病患者が治療を中断すると何が起こる?#GLP-1受容体作動薬」の題で院長記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/355793
糖尿病の高齢者は「肉」を食べても大丈夫?
2023年11月16日(木)に日刊ゲンダイデジタルへ、「糖尿病の高齢者は「肉」を食べても大丈夫?」の題で院長記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/355765
新しい注射薬(マンジャロ)
2023年9月21日(木)に日刊ゲンダイデジタルへ、「新しい注射薬(マンジャロ)」について院長の記事が掲載されました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/355549
「リンゴ酢ソーダ」が血糖値の急上昇を抑え糖尿病や肥満を防ぐ
血糖値を下げるおいしい!時短レシピ
妊娠糖尿病 しっかり対処しないと母子ともに危ない
糖尿病 合併症を招きやすい人の共通点
予備群だって危ない…高血糖を放置するとがんを招く
りんご酢が糖尿病を改善する
あなたのそれ実は“血糖値のせい”かも?
血糖値が上昇しやすい春先こそ生活習慣を見直す
「たかが風邪」が糖尿病の引き金引く
夏の低血糖は怖い
高血糖で昏睡状態に陥りインスリン治療が必要に
熱中症を招きやすい病気と薬
大人がかかるとヤバい子どもの感染症
前立腺がん 糖尿病薬で抑え込める!?
長寿につながると話題の薬
発見に役立つ「ニキビ」「音叉」「釣り糸」
糖尿病に追いやる抗うつ薬
寝不足が招く高血糖
花粉症が血糖値を上げる
糖質制限ダイエット安全なのか
本当に健康にいいウォーキング教えます
糖尿病治療が変わる!?
風邪が招く死に至る病気
貧乏ゆすりが病気を防ぐ
糖尿病は食べれば治る!
食後血糖値を上げない食事と生活5ポイント(東京スポーツ2015年10月1日号)
ブドウ糖負荷試験で早めのチェックを!(東京スポーツ2015年9月17日号)
夏のダメージで突然死
血糖値管理は「貼るだけ」
「タマネギ健康法」にダマされるな!
やればいいというわけではない 禁煙とヨーグルト
知っておきたいからだのケア「血糖値」
糖尿病のセカンドオピニオン 受けるべき「判断材料3つ」
新薬適応には条件あり
高血糖が脳をだます
糖尿病治療に新しい選択肢「SGLT2阻害薬」を知る
あなたの体調不良は糖尿病が原因だ
「インチキ健康本」にダマされるな!
脳卒中、心筋梗塞、認知症などの予防にもつながる血糖値測定の新兵器
一度インスリンを始めると一生使い続けなければならない
血糖値110~125 糖尿病「境界型」は食事・運動で治す
ヘモグロビンA1Cぐんぐん下降!
特集-糖尿病治療新時代II
野菜から先に食べ炭水化物の量を控える
心を込めて患者さんと触れ合い、テーラーメードの糖尿病診療を
糖尿病リスクが30%減少?
糖尿病克服へ画期的新薬が登場した
肥満症治療薬が来年早々にも発売
糖尿病治療薬で心筋梗塞のリスク「隠れ低血糖」ご用心
糖尿病になってたまるか!どんな検査を受けるべきか?(2)
「新薬」続々糖尿病治療が画期的に変わる
足の違和感で眠れない人の“特効薬”
新治療法BOTでインスリン注射から解放
糖尿病の合併症と一生無縁!!
糖尿病の合併症を寄せつけない血糖値のコントロールの秘訣
高血糖が神経・目・腎臓に深刻ダメージ!3大合併症の発病のメカニズム
コラム/負担少なく効果優秀!合併症を遠ざける糖尿病の最新治療
牛豚食べ過ぎ腎機能に負担
糖尿病は怖くない時代へ
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糖尿病は怖くない時代へ
血糖値、ヘモグロビンA1Cが順調下降!四股で健康復活!症例集
糖尿病は怖くない時代へ
糖尿病、ひざ痛まで大改善!「四股」を踏むとお腹へこむ!
年末年始の痛風 水分補給で防げ
病気の値段
糖尿病の人はクルマの運転を甘く見るな
夕刊フジ
わが街の医療最前線
健診結果の境界線~ギリギリセーフ実はアウト?~
「めまい 立ちくらみ」 糖尿病のサインだ
疲れは年のせいじゃない
Aさん(42歳)は、通勤する途中、駅のホームのベンチから立ち上がろうとしたら、突然意識を失った。駅係員の119番通報で、病院に救急搬送された。
まず貧血が疑われて、血液検査で赤血球を調べたが、異常なし。MRIやCTで脳を調べたが、これも問題なかった。
「Aさんの失神は起立性低血圧が原因でした。この病気は、自律神経が障害されることで発症します。原因が特定できない一次性と、ほかの病気が原因で自律神経が障害される二次性、薬の副作用による薬剤性があり、二次性の起立性低血圧で最も要注意なのが、糖尿病です。AさんのHbA1c(正常値6.1%未満)は6.5%で、薬を服用していました。」
人間の全血液量は5,000ml。立ち上がるとそのうち500~800mlが腹部や下肢に移行するため、相対的に心臓から拍出される血液の量が少なくなる。一般に、血液は心臓から拍出される血液量に比例するため、血液が下半身の方に移行すると、血圧が下がりやすい。
ところが、健康な人は自律神経の働きで、急激な血圧低下が抑えられ、血圧がほぼ維持される。なんらかの理由で、自律神経が障害されると、そういうメカニズムが働かず、イスから立ち上がったり、寝た状態から起き上がったりするときに血圧がさがる。それが起立性低血圧だ。めまいやふらつき、動悸、目のかすみ、Aさんのような失神の症状がある。
診断の決め手は血圧測定
では、なぜ糖尿病の人は、起立性低血圧の原因となる自律神経が障害されやすいのか?
「血糖値が高い状態が続くと、合併症として神経障害が表れやすくなります。それで、自律神経が障害されると、その影響で起立性低血圧を起こしやすくなるのです。」
起立性低血圧を調べるには、立ったときの血圧と、座ったときの血圧や横になったときの血圧を比較することが不可欠。
健康な人は、3分以内の血圧差は収縮期血圧(上)が20mmHg、拡張期血圧(下)が10mmHg未満。血圧差がそれ以上だと、起立性低血圧と診断される。
「Aさんは、上が50、下が38も低くなっていました。」
めまいやふらつきは午前中に起こりやすく、特に食後に悪化しやすい。 食べた物の消化に、血液が腹部に集まりやすいためだ。「起立性低血圧」を「貧血」と混同して、女性に多いと思っている人が多いが、男女差はない。
問題は起立性低血圧になって初めて、糖尿病と診断される人が後を絶たないことだ。
「それだけ、糖尿病の自覚がない人が増えているということです。手軽な値段で食事が取れる店が増えて、”ご飯のおかわりや大盛り無料”が当たり前。そういう食事を続けていると、急に糖尿病を発症したり、糖尿病が急激に悪化することがあるのです。会社の健診で異常なしだった人が、数ヶ月で糖尿病と診断されたケースもあります」
冒頭のAさんは、一般的な低血圧の薬物治療と生活改善に並行して、糖尿病の治療をきちんと受けたら、起立性低血圧の症状が治まったという。
(日刊ゲンダイ 2012年3月9日より)
昼食代ケチると糖尿病になりやすい
「セット」「大盛り無料」「早食い」がヤバイ
頻尿は泌尿器科で診てもらうのが一般的だ。ところが、泌尿器科の治療を受けても治らないことが少なくない。実は、内科の病気の症状として、頻尿に悩まされることがあるのだ。
食後血糖値が上昇。“予備軍”でも心筋梗塞、脳卒中に
Aさん(42歳)は、1年前から1ヵ月の小遣いが3万円で、一日分は1,000円だった。好きなパチンコをやめ、飲みに行く回数も減らしたが、それでも懐が苦しい。それで昼食代をカット。ハンバーガーや丼物、うどん、カレーなどで済ませるようになった。
最近は昼食代を500円以内に抑え、「天ぷらうどんといなり寿司」か「丼物とサラダ」のセットが定番に。そんな食生活を続けながら健康診断を受けたら、血糖値が高かった。再検査の結果、糖尿病と診断された。
「この方は、170センチ70キロの肥満体で、“糖尿病予備軍”でしたが、再検査で来られたときには、過去2ヵ月の平均的な血糖状態を示すHbA1cが7.6%(正常値4.3~5.8)。すぐに血糖隆下剤を服用してもらい、食事の指導をしました」
Aさんの昼食は、炭水化物や脂質の量が多過ぎる上、よく噛まずにのみ込みやすい昼食で、食後に急激に血糖値が上昇する食後高血糖を引き起こしやすかった。この食後高血糖を放置すると、糖尿病予備軍でも、心筋梗塞や脳卒中を招きやすいことが分かっている。
「Aさんには、焼き魚などの和定食を食べるように指導しました。さらに、昼食にたっぷり食べたくなるのは、朝食をしっかり取っていないためと分かり、朝食の量を増やすよう勧めました。Aさんは“朝食を増やすと、朝食後の血糖値が心配”とおっしゃったので、通勤で歩く距離を延ばしてもらいました」
食事改善を実行すると、昼食代は500円から700円にアップしたが、HbA1cは6.6%に改善した。糖尿病と診断されたとき245mg/dlだった食後血糖値(180未満が良)は、152まで低下したという。
「“糖尿病はお金持ちの病気”といわれたことがありますが、今は違います。多くはない収入で、食事量を求めるような人に、糖尿病が増えているのです。その証拠に、発展途上国に糖尿病患者が急増しています」
海外の研究によると、糖尿病といわれている人の58%は、食事と運動に気をつければ、血糖値が安定すると報告されている。
「Aさんも、もう少し早く食事に気をつけていれば、糖尿病を発症しなくて済み、薬が必要になることはなかったでしょう」
Aさんは、ラーメンを食べるとき、無料の半ライスを必ず注文。大盛りが無料の店では、もちろん大盛りに。安い店は概して混んでいるから、早食いになった。「炭水化物中心のセット」「大盛り無料」「早食い」。こんなランチを続けている人は、決して少なくないだろう。
「そういう食事で食欲が満たされると、血糖値が急上昇します。それで、血管に負担がかかるだけでなく、血糖値を下げるためにたくさんのインスリンが必要になり、インスリンを分泌するすい臓を疲弊させることにもつながります。だから、糖尿病発症リスクが高くなるのです」
糖尿病になりたくなければ、多少の昼食代は我慢して、バランスのよいランチを心掛けることだ。
(日刊ゲンダイ 2012年2月14日より)
トイレが近くて困っている皆さん 頻尿内科で治す
泌尿器科で治療を受けてもよくならない
頻尿は泌尿器科で診てもらうのが一般的だ。ところが、泌尿器科の治療を受けても治らないことが少なくない。実は、内科の病気の症状として、頻尿に悩まされることがあるのだ。
糖尿病、高血圧、睡眠障害、精神病、心不全などの影響でも・・・・
Aさん(67)は、3年ほど前から夜中に4~5回トイレに起きるようになった。そのため友人や家族との旅行も敬遠しがちに。悩んだ末、泌尿器科を受診したところ、「過活動膀胱」と診断された。
「過活動膀胱の薬で夜中のトイレが2回くらいに減ったのですが、昼間のトイレが近くなった。そのつらさをかかりつけの内科医に相談したら、採血検査の結果、糖尿病と診断されたのです」(Aさん)
過去1~2ヵ月間の平均的な血糖状態を示すヘモグロビン(HbA1c)は8.5%と、正常値の上限5.8%を大きく上回っていた。食事と無関係に測る随時血糖値が220mg/dl(2回続けて200以上は糖尿病)だった。
なぜ糖尿病だと、頻尿になるのか? Aさんの主治医で、糖尿病専門医でもある「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長が言う。
「糖尿病の人は体内の余ったブドウ糖を尿と共に体外に排出しようとして、頻尿・多尿になります。Aさんのケースがまさにそれ。夜間頻尿は過活動膀胱ではなく、糖尿病が原因だったのです」
過活動膀胱の薬には副作用も
Aさんは、辛院長の指導で過活動膀胱の薬を飲むのをストップ。糖尿病の治療に専念したところ、3ヵ月でHbA1cは6.7%、随時血糖値は154mg/dlに改善した。夜間頻尿もなくなって、ぐっすり眠れるようになった上、昼間のトイレも回数が減ったのがうれしかったという。
「Aさんがあのまま過活動膀胱の薬を飲み続けていたら大変なことになっていたかもしれません。過活動膀胱の薬は、副作用として喉が渇くことが知られています。糖尿病で血糖値が高い人が服用すると、薬の副作用でさらに喉が渇き、ジュースや清涼飲料水を飲んで糖尿病を悪化させた可能性があるのです」
症状のひとつに頻尿がある内科の病気は糖尿病だけじゃない。東邦大学医学部の東丸貴信教授(同付属佐倉病院/循環器・臨床生理)が言う。
「心不全の方は、早期から夜間頻尿が見られることがあります。心臓が元気なうちは立ったままの姿勢でも腎臓に血液が十分流れ込みますが、心不全になると少なくなって、尿がつくられにくくなります。しかし、夜床に就いて体を横たえると心臓から腎臓に大量の血液が送られるため、多くの尿がつくられるのです」
1年ほど前に心不全になってから夜間頻尿になり悩んでいたBさん(48)は、心不全の治療をするようになってから夜間頻尿が治まった。また、トイレが近いことを意識し過ぎて、その不安感から頻尿になっていたCさん(39)は心療内科で抗うつ薬を処方してもらうことで頻尿を克服した。
「頻尿というと泌尿器科の“専売特許”のように思われがちですが、必ずしもそうではありません。糖尿病や心不全、神経・精神病、高血圧、睡眠障害などの影響で頻尿になることもあるのです」(東丸教授)
気になる人は内科で相談することだ。
(日刊ゲンダイ 2012年1月24日より)
改めて教えます 40歳で糖尿病発症。 治療放棄した10年後の末路
「オレは大丈夫」と根拠なき自信を抱く皆さん
糖尿病の人は、予備軍を含めると2,000万人を超える。発症から時間が経つと、腎不全や失明、脳梗塞・心筋梗塞のリスクが高まる恐ろしい病気だ。
ところが、まったく治療していないか、治療を投げ出す人を合わせると、4割近い。少しずつ体がむしばまれていく糖尿病の“本当の恐ろしさ”を知らないのだろう。
では、40歳前後で糖尿病を発症した人が、治療せず放置したらどうなるか?
糖尿病専門医で、「しんクリニック」(東京・蒲田)院長の辛浩基氏に聞いた。
加藤降さん(仮名)が会社の健康診断で「糖尿病の疑いあり」警告をうけたのは38歳だった。
再検査を受けると、過去2カ月ほどの平均的な血糖状態を示すヘモグロビン(HbA1c)は、5.8%(正常値は5.2~5.6。糖尿病は6.1以上)で、「正常」と「糖尿病」の間の「境界型」と診断された。
両親、兄弟とも糖尿病とは無縁で、「ちょっと食べ過ぎているだけ。オレは大丈夫」という根拠のない自信から、診断結果を無視していた。
何も手を打たずにいると、翌年はHbA1cが5.9、翌々年は6.1に上昇。空腹時血糖は128mg/dl(正常は100~110未満)で、ついに糖尿病と診断された。”糖尿病疑い”のイエローカードを出されてから2年後だ。
「”血糖値が少しくらい基準値を超えても大したことない”と考えている方がよくいますが、最新研究では、糖尿病と診断された時点で、”血液中の糖分をエネルギーに転換したり、筋肉にため込んだりするのに必要なホルモンのインスリンを作り出すすい臓のβ細胞が、50%破壊されている”といわれているのです。β細胞は一度壊れると元に戻りません。早い人では、この時点で心筋梗塞や脳梗塞などの合併症状が起きています」
インスリン作る細胞が破壊されると・・・
昼食後に妙に眠くなる、背中がかゆくなる、指先がジンジンするといった症状をすでに自覚していた加藤さんは、さすがに「過食や運動不足に気をつけた方がいいな」と思い、しばらくは車通勤をやめて徒歩で通勤するなど生活改善に注意していた。
しかし、すぐに続かなくなり、深夜にドカ食いして、車で通勤する生活に戻ってしまった。
「血糖値を下げる努力はしたけど、これじゃダメだ。来年受ければいい」と言い訳して、イエローカードから3年目の健康診断をパス。その後も健康診断をサボり続けた。
「後で聞いた話では、その間、加藤さんは、明るいところに出るとひどくまぶしく感じたり、目の前に糸くずや蚊のようなものが現れる飛蚊症の自覚症状がひどくなったりしていたようです。これは失明につながる糖尿病網膜症の初期症状。網膜での点状出血があったと考えられます」
当時の加藤さんは家族も驚くほどの食欲で、会社帰りにすぐカレーを食べながら、午後9時過ぎに家で夕食を取るのが当たり前。
“一日6食”という日もあったという。
それでも太ったように思えなかったため、「オレは若い頃のようにエネルギッシュで、食べても太らない体質なんだ」と感じていたという。
「異常な食欲があるのに太らずやせるというのは危険な兆候です。インスリン不足のため血液中の糖分を体に取り込めずエネルギー不足になり、筋肉などに蓄積されている糖分が使われてやせるのです」
夕方、靴下の痕がクッキリ残ってむくんでいた加藤さんが、脳梗塞で倒れたのは48歳。イエローカードから10年目だ。
「先にも指摘したように、一度破壊されたβ細胞は元に戻らない。ですから、糖尿病と診断されたらすぐ食事、運動、薬などあらゆる手段で、治療を受けることが大切です」
肝に銘じよう。
(日刊ゲンダイ 2012年1月17日より)
9月から始まった 新しい糖尿病の治療法で心配なこと
インクレチン関連薬の併用は問題ないのか?
運動不足や過食といった生活習慣などが原因で発症する2型糖尿病の新治療法が、9月からスタートした。
インスリン治療をしている人で、思うように血糖値が下がらない人向けに、インクレチン関連薬のひとつであるシタグリプチンリン酸塩水和物(商品名ジャヌビア、グラクティブ)の併用が認められたのだ。
インクレチンは胃や腸を食べ物が通過するときに消化管から分泌されるホルモンで、膵臓に働きかけて血糖を下げるよう促す。インクレチン関連薬はその働きを強める薬だ。
しかし、インクレチン関連薬と他の糖尿病治療薬との併用で思い出すのは、強力に膵臓に働きかけてインスリン分泌を促すSU剤との併用で重篤な低血糖が続出、2人の死者が出て日本糖尿病学会から緊急の注意喚起が出されたこと。
今回はそんな問題は起きないのか?併用にはどんなメリットがあるのか?糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長に聞いた。
「うちでは長時間効果があるタイプ(持効型)のインスリンを、1日1回打っている患者さんで食後高血糖がハッキリしている患者さん1人にのみ、グラクティブとの併用を行っています。私は併用のメリットは3つあると考えています。1つは食後の高血糖を抑えられる、2つ目は注射によるインスリン量を減らす、3つ目はインスリン分泌を担う膵臓の機能維持に役立つことが期待できるということです。逆にいえばそこに問題がある患者さんにしか使うのは難しいと考えています」
確かに食後高血糖の問題は大切だ。国内外の研究から、食後高血糖の人は脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクが高まるばかりでなく、糖尿病網膜症やがんの発症リスクとも関連していることがわかっている。
また、インスリン注射を打つ人は太りやすいことが知られていて、その量を減らせば肥満を予防できる可能性がある。
しかし、これは従来から行われてきた「SU剤とインスリン」の併用療法と同じではないのか?
「いいえ、違います。SU剤は飲むと膵臓からインスリンを分泌させますが、インクレチン関連薬は、消化管内の血糖が高くなければ膵臓に働きかけてインスリンを分泌させることはありません。
つまり、必要以上に膵臓を働かせないため、低血糖になりにくいといわれています。しかも、動物実験ではインスリン生成に必要な膵β細胞の保護作用が確認されているのです」
ならば、インクレチン関連薬とインスリンの併用は、どんどん行った方がいいのではないか?
「そこが問題なのです。確かにインクレチン関連薬は、高血糖時にインスリン分泌を促進させ、そうでない時には作用しないことがわかっています。しかし、忘れてならないのはインクレチン関連薬の働きはそれだけではないことです。血糖を上昇させるグルカゴンと呼ばれるホルモンを強力に抑制する働きがあるのです。ですから、食事ごとにインスリン注射して食後高血糖が抑えられている人や、現在インスリン注射で血糖が安定している人が無理にこの併用療法を行うと、重篤な低血糖を起こす可能性があるのではないか、と考えられるのです」
新しい治療法が登場すると、医師はもちろん、患者もすぐに飛びついてしまう傾向にある。しかし、自分の体のことなのだから、新しい治療法のメリットとデメリットを説明してくれる医師とよく相談し、慎重に使うことだ。
(日刊ゲンダイ 2011年12月16日より)
糖尿病の人はB型肝炎ワクチンを!
米国では「予防接種」を推奨
気になるニュースが飛び込んできた。
米国では10月末から新たに、糖尿病患者に対してB型肝炎の予防接種を推奨することになったというのだ。一体、どういうことなのか?
糖尿病患者へのB型肝炎ワクチン接種の推奨を決めたのは米国予防接種諮問委員会(ACIP)。10月末の会合で、60歳未満の成人糖尿病患者に対するB型肝炎ワクチンの定期種の是非について投票を行った結果、接種を支持する提言を行う決め、60歳以上も「接種可」としたという。
「賛成12、反対2でB型肝炎ワクチンの接種を受けるべき“大人のハイリスク群”の中に、糖尿病患者さんを含めることを決議しました。理由は糖尿病の患者さんとそうでない人を比べたところ、B型肝炎発症の確率が2倍を超えるとの複数の研究報告がなされているからです。米国では1991年ごろから幼少期にB型肝炎ワクチンを打つ制度がありますが、それ以前の人は免疫を持っていない人がいるからです」(都内の糖尿病専門医)
実際、米国疾病対策予防センターが急性肝炎の患者865人を調べたところ、95人が糖尿病患者で、23~59歳の人では、糖尿病患者の発症率はそうでない人より2.1倍高かったという。
B型肝炎は血液を介して感染する病気。多くは無症状だが、2~3割は急性肝炎を発症し、1~2%は劇症化する。日本ではB型肝炎ウイルスのキャリア(保菌者)は約150万人ともいわれ、急性肝炎から慢性肝炎に移行し、肝硬変や肝がんになることも少なくない。
糖尿病患者の発症率は2倍以上
では、なぜ糖尿病患者にB型肝炎が多いのか。
「糖尿病の患者さんは抵抗力が低く感染症になりやすいといわれますが、だからといって血液を介して感染するB型肝炎ウイルスに感染しやすいわけではありません。日本ではB型肝炎ウイルスは、集団予防接種の注射器の使い回しが大きな原因といわれていますが、実は糖尿病患者さんがよく使う血糖測定器の使い回しが原因でB型肝炎ウイルスが広く感染していることが、欧米では以前から指摘されていました」(前出の糖尿病専門医)
例えば米オハイオ州のある病院で、急性B型肝炎を発症した3人の患者が、数力月前に同じ内科病棟に19日間入院したことが判明。病院が調査したところ、他に11人が院内感染していた可能性があることがわかり、その原因穿刺採血による血糖値モニタリングの可能性があるとの研究論文がある。
また、米ノースカロライナ州の高齢者施設内では、8人がB型肝炎を発症、5人が死亡。米国の公衆衛生当局が調査したところ、血糖測定器の使い回しが原因だったことが判明した。
日本では血糖測定器ではないが、5年前に京都市内の病院で外来の透析患者8人がB型肝炎を発症、5人が入院する騒ぎも起きている。
では、日本でも糖尿病の人は、B型肝炎ワクチンを打った方がいいのか?
「日本では血糖測定器などの使い回しが起きないよう、保健所などのアンケート等で注意喚起されていて今はありえない、とは思いますが、用心に越したことはありません。B型肝炎ワクチン接種は医療関係者や風俗関係者などでは常識とされていますが、一般成人で打っているのは海外に行く人くらい。B型肝炎ウイルスに感染した人は、膵臓がんになりやすいという説もありますし、感染歴のない人は、糖尿病に限らずB型肝炎ワクチンは打っておいた方がいいかもしれません」(首都圏の肝臓病専門医)
(日刊ゲンダイ 2011年11月30日より)
糖尿病を悪化させるうつ病の薬に気をつけろ!
もともと関係が深い病気だが…
「糖尿病患者の10~30%はうつ病を併発、健康な人より2倍うつ病になりやすい」「うつ病を併発した糖尿病患者は、血糖コントロールが悪く、短命」。
最近、こうした研究報告が相次ぎ、「糖尿病とうつ病の関係」に注目が集まっている。
9月の「欧州糖尿病学会」でも「2型糖尿病のうつ病は放置され、慢性化している可能性があり、問題」と指摘され話題になった。
そのため日本でも糖尿病患者が自ら心療内科などを受診したり、糖尿病専門医が紹介するケースも目立っているのだが、実は、それがかえって糖尿病を重症化させることがあるというから要注意だ。
相良正一さん(53=仮名)は、4年前の会社の定期健診で糖尿病が見つかった。過去1ヵ月ほどの平均血糖値であるヘモグロビン(HbA1c)は6.3%(正常値は5.8%未満)。軽度の糖尿病と呼ばれる段階だった。
すぐに糖尿病専門医の指導の下、食事療法に取り組んだ相良さんのHbA1cは5.6%に低下、境界型の状態で安定した。
ところが昨年、相良さんはうつ病の症状を訴え、HbA1cが6.1%に再上昇。空腹時血糖値も122mg/dl(正常値は110未満)に。相良さんはハイヤーの運転手で、不況のあおりでお得意さんだった社長や医師らのハイヤー離れが進み、心を痛めていたのだ。
そこで心療内科でうつ病の治療を受けたところ、その1ヵ月半後にHbA1cが8.2%に、空腹時血糖値が382に跳ね上かっていたのだ。相良さんの主治医で「しんクリニック」(東京・蒲田)院長の辛浩基氏が言う。
「相良さんに話を聞いたところ、心療内科でMARTA(多元受容体作用抗精神病薬)と呼ばれる比較的新しいタイプの抗精神病薬「クエチアピン」(一般名)をもらっていたことがわかりました。この薬は鎮静効果があるため、睡眠をとりやすかったり、認知機能を改善することから、適応のある統合失調症(分裂病)以外に、うつ病治療にも広く使われています。しかし、血糖値を上げる恐れがあるため、糖尿病患者さんには使ってはいけない薬なのです」
1ヵ月で境界型の人がインスリン治療が必要になった例もある
辛院長はすぐに、「クエチアピン」を飲むのをやめるよう指示。血糖を下げるSU剤やビグアナイド剤などを処方したが、1ヵ月後の空腹時血糖値は655、HbA1cが11.1%となり、インスリン治療をスタートせざるを得なかった。いったん「クエチアピン」を飲めば、ストップするだけでは悪影響は止まらないということか。
「1日1回、持続型のインスリンを注射して食事前は血糖降下剤の内服薬を飲む、BOTと呼ばれる治療を行いました。その後、徐々に血糖値は下がり、インスリンは使わなくてすむようになりましたが、一時は命を失う寸前でした」 (辛院長)
ところが、相良さんがそのことを心療内科医に告げると、「ああ、そうですか」でおしまいだった。
「実は、相良さんと同じようなケースが他に4、5例あります。怖いのは境界型でありながら糖尿病の治療をしておらず、自身を“糖尿病患者”と認識していない人のケースです。“この薬は血糖値を大幅に上昇させることがある”という認識を持っていないうつ病治療の医師が、安易に処方し、糖尿病を発症する可能性は大いにあります」(辛院長)
都内で心療内科クリニックを営む精神科医は、「いちいち血糖値を確認してこの薬を処方する精神科の医師ばかりではないだろう」と言う。
糖尿病の人が、うつ病の薬を飲むときは、十分気をつけなければならないのだ。
(日刊ゲンダイ 2011年11月9日より)
胃もたれ食欲不振は糖尿病性胃症だった
夏バテかストレスのせいと思っていたら・・・
食事はしているのに体に力が入らずボーッとする。胃がもたれて、食欲がない。やせてきた。
糖尿病の人がこんな症状に襲われたら「糖尿病性胃症」を疑うべきだ。
高血糖が続くことにより起こる糖尿病の3大合併症のひとつである「神経障害」は「腎症」「網膜症」より早く起こる。
一般的には足の裏や爪先がジンジンしびれるのが有名だが、「糖尿病性胃症」はその一種で、糖尿病と診断されて3年を経過すると起きやすい。
どんな症状が出て、放っておくとどうなるのか?糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)院長の辛浩基院長に聞いた。
中村泰三さん(53=仮名)は6年前に糖尿病と診断され、血糖降下剤を飲んでいる。
この2、3年は薬の効き目が悪くなり、血糖値も上がり気味。2年ほど前から手足のしびれを感じ、最近はヘモグロビン(Hb)A1cも8%を超え始めたことから、医師からは「そろそろインスリンを検討しなければいけません」と言われていた。
そんな中村さん、突然体重が落ち始めた。ダイエットに励んだわけではない。「胃がもたれ、食欲がない。すぐに満腹になる」というのだ。
「主治医に相談したところ、“糖尿病性胃症ではないか”というのでCVRRという検査を受けたところ、間違いありませんでした」(中村さん)
CVRR検査とは、心電図で心臓の副交感神経機能を調べ、「糖尿病性神経障害」を含めた自律神経障害の有無をチェックする検査だ。
健常な人の心臓は多少のゆらぎはあるものの、規則正しく脈を打つ。ところが、副交感神経に異常があると、ゆらぎが変化する。それを調べるのだ。
実際の検査は15分程度安静にした後、「安静時」と「1分間に6回程度の深呼吸をした時」の心電図を比較して行われる。
「胃は副交感神経の影響を強く受けるため、CVRR検査は糖尿病性胃症を確定するのに有効で、唯一の検査になっています」
治療しないと血糖値上がり糖尿病が悪化する
中村さんは検査後、主治医の指示で「ガスモチン」と呼ばれる胃の蠕動運動を改善する薬を服用したところ、胃の不調が解消。HbA1cも7.2%に回復し、安定した。
「中村さんのような糖尿病患者さんは結構います。本人は明確な自覚症状がなく、夏バテや職場・家庭でのストレスなどのせいと勝手に判断し、放っておく。その間に食後低血糖の後に高血糖が起こるパターンが続き、症状がドンドン悪くなって、気がついた時にはインスリンが必要なまでに血糖値が乱れてしまうケースがあります」
実際、糖尿病性胃症の人にバリウムを飲んでもらい、それが胃から排出されるまでの時間を調べた研究では、バリウムが丸1日残っていたケースもあったという。
つまり、糖尿病性胃症の人は、食後に血糖値が高くなることを予想して血糖降下剤を飲んでも、食べ物がいつまでも胃の中で消化されず、薬による食後低血糖が起きてしまうのだ。
しかも、ようやく食べ物が消化され血糖が高くなってきた頃には、血糖降下剤の効き目がなくなり高血圧になるというわけだ。「“胃が重い”“食欲がない”という人で、糖尿病の薬を使っているのに血糖コントロールが悪い人は、まずCVRR検査をすること。その後に血糖降下剤を使う時間や量を変えたり、胃腸の動きを高める薬を検討することです」
糖尿病の人にとって、胃の不調は糖尿病を悪化させる原因であることを覚えておくことだ。
(日刊ゲンダイ2011年9月28日より)
低血糖でヤバイことにならない5ヵ条
糖尿病で最も警戒が必要
「糖尿病は血糖値さえ低めに抑えればいい」と思っている人は多いが、それは“過去の常識”だ。
最近の研究では糖尿病で最も警戒すべきは「低血糖」で、厳格な血糖コントロールは低血糖から心臓病などを引き起こすリスクを高め、命にかかわりかねないというのだ。 「低血糖」を防ぐにはどうすればいいのか?糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長に聞いた。
そもそもなぜ、低血糖がそんなに重要なのか?
「一番の問題は心臓に負担がかかることです。低血糖になると交感神経が優位になり心臓の太い動脈がけいれんして細くなる冠動脈れん縮を起こします。その結果、致死性不整脈が起きることがあります。さらに血管内のプラーク(粥腫)を破錠させ、血栓ができやすくなるのです」
低血糖というと体の震えや激しい空腹感など、わかりやすい自覚症状があると思われがちだが、必ずしもそうではない。それだけに厄介で危険なのだ。
低血糖がさらなる高血糖を呼ぶこともある。
「低血糖になると、体がそれに対抗して、血糖値を上げる働きのあるグルカゴンと呼ばれるホルモンを分泌します。その影響で急に高血糖となり、血糖コントロールが乱れるのです」
知らず知らずの低血糖によって、気持ちが落ち込み、疲労感に襲われるなどして、うつ症状になることもあるという。
震えや空腹感などの自覚症状ないことあるから厄介で怖い
そんな危険な低血糖を防ぐ方法を紹介しよう。
第1は「頚動脈エコー検査を受ける」だ。
全身の動脈硬化が進み、頚動脈などにプラークなどがある人は冠動脈れん縮から心臓病発症のリスクが高まる。そのチェックに一番いいのが、頚動脈エコー検査だ。 「もし動脈硬化が進んでいて、経口血糖降下薬SU剤を飲んでいるなら、別の薬に替える方がいいでしょう。SU剤は低血糖を起こしやすいことが知られています」
第2は「朝食は職場近くでとる」こと。
Aさん(55)はヘモグロビン(Hb)A1cが7.2%で、朝食直前に糖尿病の経口薬を1錠飲んでいた。ある日昼前に職場で具合が悪くなり救急車で病院へ。血糖値は低血糖の“境目”70mg/dlの半分近い45だった。「明らかな低血糖です。Aさんの職場は自宅のある場所から電車で1時間半かかるため、朝食を6時にとっていた。昼は来客などで忙しく昼食はいつも午後2時過ぎ。低血糖になるのは当然です」
Aさんはその後、朝食を職場近くでとるようにしたという。
「夜中から早朝の血糖値を測る」が3番目だ。
朝起きるといつも下着が汗でぐっしょり濡れているBさん(45)。夜中にたびたび目を覚ますため診察したところ、低血糖の可能性を告げられ、夜中から早朝に自分で血糖値を測るよう言われた。
「Bさんは、汗と夜半の目覚めは室温と肥満体形のせいと思われていたそうですが、実は汗は寝汗で寝苦しさは動悸のせいでした。これは低血糖の典型的な症例です。できれば24時間血糖値を測れる機械を使えばいいが、無理なら簡易の自己血糖測定器を使い午前0時、同3時、同5時ごろに調べてみるといいでしょう」
4番目は「薬の効かなくなる時間帯を知る」だ。
低血糖を起こしやすいのはSU剤と呼ばれる、膵臓から血糖値を抑えるインスリンを分泌させる飲み薬とインスリン注射だ。こうした薬の血液中の濃度が減って薬の効果が薄まっている時間を知っておくことも大切だ。「仕事を持っていれば、常に同じ時間に食事ができるわけではありません。昼食を抜かなければならないときもあるはずです。そのときの薬の状態を知っておきましょう」
最後は「運動は食事の30分後に」ということ。
肥満型の糖尿病の人は、やせなくてはとの強迫観念から、朝食前にジョギングなどをしようとするが、注意が必要だ。
「運動前にバナナなどで補食していればいいのですが、そうでなければ低血糖を起こすことがあります。食事直後の運動もいけません。血糖値がなかなか上がらないタイプの人は、食事前の運動と同じリスクがあります」
(日刊ゲンダイ 2011年8月9日より)
糖尿病の人は要注意
腎機能が悪化したら薬変えないとヤバい
糖尿病を患った人は、血糖値ばかりに目が行きがちだが、それは危ない。糖尿病になると動脈硬化が進み、体中の臓器の機能が低下する。そのため目や心臓などの働きにも注意が必要なのだが、とくに糖尿病の薬を飲んでいる人は、腎臓の働きのチェックを忘れてはいけないという。
腎機能が悪化すると、糖尿病の薬が体の中にとどまる時間が長くなり、副作用が出やすくなる。だから薬の量や種類を変える必要があるのだ。では、どんな糖尿病薬に変えるべきなのか。専門医に聞いた。
佐藤健一さん(55=仮名)は8年前に自宅近くの診療所で糖尿病と宣告された。きちょうめんな性格の佐藤さんは医師の指示通り薬を飲んでいたが、最近、暑くないのに汗をかいたり、動悸や強く空腹を感じるようになった。「松尾内科クリニック」(東京・桜新町)院長で腎臓病専門医の松尾孝俊氏が言う。 「職場に近い私の病院に来られた佐藤さんを調べたところ、血清クレアチニン値(男性の基準値0.66~1.13mg/dl)が1.5と高めでした。クレアチニンとは血液中の老廃物のひとつで、通常であれば腎臓で濾過され、尿中に排出されるのが普通。血液中の濃度は少量です。これが増えるのは腎機能が落ちていた証拠。つまり、佐藤さんが毎日飲んでいた糖尿病薬は腎臓で通常通りに排泄されず、体内に長くとどまっていた。そこに薬を飲み続けたため、薬が効きすぎ、低血糖になったのです」
血糖値を下げる飲み薬は大きく分けて4種類ある。インスリン分泌を促進させる薬、ブドウ糖の吸収を阻害させる薬、インスリンの効き目を高める薬、それに昨年から出たインクレチン関連薬だ。佐藤さんが飲んでいたのはインスリンを分泌させるSU剤で、主に腎臓で代謝されるグリベンクラミド(商品名オイグルコン)だった。 「それをミチグリニドカルシウム(商品名グルファスト)という薬に変えました。グリベンクラミドに比べ血中の半減期、作用時間が3分の1と短く、食事前に飲めば低血糖を起こしにくいうえ、安全です」(松尾院長)
副作用が出やすくなる
佐藤さんは大事には至らなかったが、実は腎機能低下が原因の低血糖は意外に多く、高齢者では死を招くことがあるという。
糖尿病のスペシャリストで「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長が言う。 「糖尿病で別の病院で薬をもらっていた一人暮らしの70代男性のご家族から、“連絡が取れない”と訴えがあり、調べたところ3日間低血糖で意識がなかったという例がありました。この人は、幸い助かりましたが、血清クレアチニン値が2.0でした」
では、糖尿病の人は、どんなことに気をつけなければならないのか。
「3ヵ月に1度くらいの間隔で血清クレアチニン値を測ることです。この値が1.5になったら主治医に相談しましょう。SU剤の人は、ブドウ糖の吸収を抑える薬やインスリン抵抗性を改善する薬やインクレチン関連薬に変えることが必要です。それで血糖値が下がらないときは、超即効型インスリンを1日3回注射するのもいいでしょう」(辛院長)
SU剤を飲んでいる高齢者は、特にこの夏は要注意だという。
「糖尿病の人はただでさえ夏場は脱水状態になりやすく、突然クレアチニン値が跳ね上がり急性腎不全を起こしやすい。今夏は東日本大震災による15%節電が実施され、クーラーを控えざるを得ない。動脈硬化が進んでいる高齢者は腎臓の血流が少ないから、急性腎不全から透析に向かう高齢者が相当増えるのではないかと心配しています」(辛院長)
(日刊ゲンダイ 2011年6月17日より)
これ知らないと危ない、糖尿病の人のための災害マニュアル
東日本大震災のニュース画像を見て、震え上がった糖尿病の人は多いのではないか。薬が頼りの人は、災害はしのげても、薬はなく、水もろくに飲めず、睡眠も十分取れない避難所暮らしで、生き抜くのは容易ではない。
余震は今も続いていて、いつ、どこがマグニチュード7クラスの地震に襲われ、同じような状況におかれるか分からない。だれもが明日は我が身なのだ。
そこで、イザというときに備え、糖尿病の人が知っておくべき「災害マニュアル」を糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)院長の辛浩基氏に聞いた。
「大事なことは、被災後3日間は、自力で乗り切る準備をしておくことです。被災してまず心配になるのが薬です。現在、薬によっては3ヵ月の長期処方が許されています。できたら1ヵ月分の薬は、病気専用バッグなどに保管し、病院で新たに処方してもらうたびに入れ替えることです」
とくにインスリンがまったく出ない1型糖尿病の人は、インスリンの確保が生死につながる。風通しの良い4度以下の暗い場所なら、室内でも保管はできるので用意しておくことだ。
「1型でも2型でも、インスリン注射をしている人は、薬に加え、注射針や注射器、消毒用アルコールも、まとめて1ヵ月分用意しておきましょう」
糖尿病の薬を毎日飲んでいても、何のための薬か、何という名前の薬かが分からない人がいるが、これは危険だ。
「被害の大きい場所から電話で“薬を手に入れたい”と相談を受けた際、“どんな薬を飲んでいましたか?”と聞くと、“丸くて白い玉”などと答える糖尿病愚者さんがおられました。適切な指示ができずに困りました。保険証と共に、お薬手帳や糖尿病手帳は必ず持ち出せるようにしておくべきです」(宮城県内の糖尿病専門医)
準備しておくこと 被災時にしてはいけないこと やるべきこと
災害バッグに砂糖やあめ玉を入れておくのも忘れてはいけない。
「避難所暮らしで怖いのは低血糖です。普段より体を動かすため、ただでさえ低血糖になりやすいうえに、まともな食事を取れないのに薬だけは普段通り飲み続けるから低血糖になるのです。そんなとき頼りになるのが砂糖やあめ玉です」
さらに、糖尿病の人は免疫力が弱いため、ケガをすると簡単に壊疽になる。災害バッグに軍手と消毒液は欠かせない。
被災したら、周りの人に自分は糖尿病であることを伝えることも大切だ。
「急に倒れて低血糖が疑われるようなら、“ほっぺたの裏に砂糖を塗るように”頼んでおきましょう。また、朝、いつまでも起きてこないときは必ず起こしにきてもらい、低血糖の疑いがないか、みてもらいましょう。1型の人が低血糖になると、気が大きくなり、大声でしゃべることがあります。普段より陽気になったら、低血糖を疑うよう、お願いしておくのも手です」
食事や水分補給はどうしたらいいのか?
「避難所の食事は炭水化物が中心ですから注意が必要です。災害バッグに低血糖食を入れるだけでなく、普段から食べ物のカロリーや糖分についての目安を覚えておきましよう。避難所ではトイレが不便なため、水分補給を制限しがちですが、糖尿病の人は水分不足から便秘や脱水症状になり、血糖コントロールが悪化。血管の中に血栓ができたり、詰まったりします。水分は多めに。ただし、あくまでも水かお茶。スポーツドリンクは薄めて飲み、ジュースは避けましょう」
(日刊ゲンダイ2011年5月27日より)
糖尿病治療 1日の血糖値変動のパターンを調べる
もっと元気になる!本気ならここまでやれ
健康診断で「血糖値が高い」と指摘され、出された薬を黙って飲んでいる。本気で糖尿病と闘うつもりなら、そんなアバウトな治療ではいけない。
まずは、自分の1日の血糖値の変動パターンを知ってから、それに応じた対策をとるべきだ。
そうすれば、糖尿病手前の境界型の人が正常になったり、糖尿病の人が境界型まで戻るといったことも起こるのだ。
ではどんなパターンの人に、どんな治療が必要なのか?糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)院長の辛浩基氏に聞いた。
「24時間連続して血糖値を観察できる持続血糖モニター(CGM)で調べると、ヘモグロビン(Hb)A1c(正常値4.3~5.8%)が4.8%と正常な人の血糖値は、1日を通じて100mg/dl前後の狭い範囲で推移しています。ところが、糖代謝が悪い人は、3つのパターンに分かれることがわかっています」
例えば、HbA1cが5.6%の境界型の人を調べると、血糖値は食後だけ170に跳ね上がる。6.2%の人だと、食後血糖値の最高が200となり、8.5%の重度の糖尿病患者だと空腹時血糖値が150を、食後は300を超えてしまう。
「糖尿病が怖いのは、心臓や脳、目などに合併症を起こすからですが、それは単に血糖値が高いからだけではありません。
食後血糖値が急激に上がる人は、血管の内側の壁がダメージを受け、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなるし、逆に夜間などに血糖値が大きく下がる人は低血糖になりやすいのです」
ところが、それを知らずに、薬だけ出している一般内科医が少なくないという。
「そのために、逆に糖尿病が進んでしまっている人が大勢いるのは残念。血糖値の日内変動に応じた治療をすれば、薬から縁を切れる人もいるのです」
では、具体的にどんな治療をすればいいのか?
「一番いいのはCGMで24時間血糖値を調べることですが、無理なら、自己血糖測定器で毎食前後と寝る前の1日7回血糖値を調べることです」
自己血糖測定器は薬局で1万円ほどで買える。
たとえ健康診断で正常といわれても、日内変動パターンでみると糖尿病の人もいるので、機会があればチャレンジすることだ。
「それで、食後血糖値が200mg/dl未満なら、運動と食事制限を徹底的にやることです」
HbA1cが悪いとすぐにSU剤を出す内科医がいるが、とくに肥満気味の人は当面自助努力すべきだという。
「SU剤を飲むと血糖値がすぐに下がるので、逆に過食になる人も多い。これでは糖尿病を治すチャンスがなくなります」
では、食後血糖値が200mg/dlを超えている人はどうか?
「α-GIやグリニド系薬剤がお勧めですが、痩せ型で糖尿病の人は、インスリン分泌が少ないタイプが多く、HbA1cを下げられない場合もある。インスリン量を調べる血液検査をすべきです」
なお、最近話題のインクレチン関連薬は、「インスリン分泌が少ないタイプの人が使うと、効果が期待できない」というから要注意だ。
なお、重度の糖尿病の人はインスリンを使いつつ、どんな食べ物がとくに血糖を上げやすいかを考えて治療することだ。
(日刊ゲンダイ2011年4月27日より)
糖尿病新薬 DPP-4阻害薬 半年使ったら効かなくなった!?
販売1年で評判上々だけど・・・
まったく新しい仕組みで血糖値を下げる糖尿病の飲み薬、DPP-4阻害薬が発売されて1年。併用する血糖降下剤によっては効き過ぎて低血糖になる問題が浮上したが、「使い方さえ間違えなければ問題なし。劇的に血糖値が下がるうえ、体重を増やさないなど利点が多い」(都内の糖尿病専門医)と評判は上々だ。
ところが「よく効く」はずのこの薬、途中で効果が消え、血糖値アップが見られることがあるという。
東京・城南地区の医師会などが開いた「糖尿病合併症セミナー」(1月20日)で症例報告した、「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長に聞いた。
「今回、私が報告したのは、現在発売されている3種あるDPP-4阻害薬のうち1種類を使った50代の男性2人の糖尿病患者さんの例です。いずれも飲み始めは劇的に血糖値が下がったのですが、半年を過ぎた頃から血糖値が上昇し、1人はインスリンを使わざるを得なくなったのです。」
DPP-4とは食後に分泌され血糖値を安定させる、消化ホルモン(インクレチン)を分解する酵素のこと。新しい治療薬はこれをブロックすることでインクレチンの濃度を高め、血糖値を安定させる。
薬でコントロールできていると思ったら・・・
59歳の男性Aさんは糖尿病を発症しておよそ10年。180センチ、体重59.6キロでBMIが18.4とスリムな体形のAさんは、既存の血糖値降下剤を飲んでいるにもかかわらず、過去1~2カ月の血糖値の状態を表すヘモグロビン(Hb)A1c(正常値は4.3~5.8%)が、8.5%に高止まりしたまま。
「DPP-4阻害薬を昨年2月から使い始め、6月にはHbA1cが6.2%まで下がりましたが、10月に6.8%、12月には7.4%、今年1月には8%と再び悪化してしまいました。新しい薬で血糖値が下がると、安心して食べ過ぎる人がいます。それで血糖値が上がったのかとも疑いましたが、Aさんは“食事は変わっていません”とのこと。事実、薬を飲み始めた前後で、Aさんの体重は変わりませんでした。」
はじめは劇的に血糖値下がる
56歳男性のBさんは161センチ、74.6キロでBMIは28.8と典型的な肥満タイプ。DPP-4阻害薬を飲み始めた昨年1月時点で8.6%だったHbA1cが、4カ月後には6.4%まで低下。その後、しばらく安定していたが昨年9月には7.1%、11月には8.5%と急上昇。12月には9%を超え、インスリンを使うようになったという。
「当初、この2人の患者さんは“特殊な例ではないか”と考えましたが、同じセミナーに出席されていた複数の糖尿病治療専門医からも、“私の患者さんにも同じような方がおられる”との感想をいただきました。」
では、どうしてこうした事が起きるのか?「ハッキリしたことはわかりませんが、DPP-4阻害薬は、糖尿病暦が長くてインスリンをつくる膵β細胞がかなり減った人や、やせている糖尿病患者さんに多いインスリンの分泌量が少ない人には効きにくいことがわかっています。そういう人は、最初はこの薬が効くように見えても、やがて効果が薄れるケースもあるというではないでしょうか。」
インクレチンの濃度を高めて血糖値を抑える薬は、ほかにGLP-1と呼ばれる注射薬があるが、「インスリン分泌量が少ない人は、同じことが起きる可能性もゼロではない」と辛院長はいう。
新薬で血糖値が下がっても、万々歳というわけには行かないケースもあることを覚えておこう。
(日刊ゲンダイ 2011年3月23日より)
本邦初公開 名医のダイエット
糖尿病治療の名医として知られる「しんクリニック」(東京・大田区)の辛浩基院長(52歳)も、毎日、体重計に乗っている。辛院長は79kgあった体重を、食べ方の工夫など無理なく続けられるダイエット法を組み合わせ、2ヶ月で6kg減らすのに成功した。
「それまではつけ麺にハマっていたんです。でも、炭水化物だけの食事は肥満の原因になる。外食のおすすめは和定食でご飯少な目です。これまでは炭水化物中心の食事をしていた人は、完全に抜かなくてもそれだけで、減量につながります。またビールの原料は麦で、炭水化物ですから、それを控えるだけでも違います。」
「食べる速さ」もポイントだ。栄養の吸収を高める早食いは肥満につながる。よく噛んで時間をかけるのが、太らない食べ方である。
食事面の注意と平行して、辛医師は有酸素運動のやり方にも工夫をこらした。
「僕も一時はジムへ通っていましたが、自宅で手軽に有酸素運動ができる方法はないかと考えて、相撲の四股を10分間、寝る前に踏むことにした。走るよりはカロリー消費は少ないですが、息が上がって有酸素運動になります。腰や股関節のストレッチにもなるし、続けていると足腰がしっかりしてくるのが実感できます」
(週刊現代2011年3月14日より)
つい医者にウソついたばっかりに・・・
「このくらいのウソなら問題ないだろう」は危ない
軽い気持ちが重大結果を招く
医者の前でウソをつく――。
あなたはそんな経験をした事がないだろうか?「年下の若い医者にアレコレ言われるのが嫌だから」「指示通りに食事や運動をしなかった自分が恥ずかしいから」……。
ウソの理由はさまざまだが、共通しているのは「これくらいのウソなら問題ないだろう」という勝手な思い込み。ところが、軽い気持ちでついたウソが、重大な結果を招く事があるのだ。そんな実例を医師に聞いた。
「薬はまだあります」
糖尿病が進み食事や運動だけでは血糖値をコントロールできなくなったAさん(45)。血糖降下剤を服用するようになって、9%近かったヘモグロビンA1cが7%台に。倦怠感や食後の睡魔も消え、元気を取り戻したAさんは、「仕事が忙しい」を言い訳に、徐々に受診する間隔が長くなった。
診療で医師が「薬は足りてますか?」と聞くと、「大丈夫です」と答えるのだが、ヘモグロビンA1cの値は10%台に。Aさんはほどなくして糖尿病が原因の心筋梗塞を起こし、救命救急センターに担ぎ込まれたという。糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長が言う。
「Aさんは症状が消えたので勝手に薬をやめ、知人に薦められた健康食品や漢方薬などに頼っていたそうです。Aさんのような糖尿病の患者さんはたくさんいますが、それは命取りになりかねません。医師は薬以上に血糖値をコントロールできるものはないから、薬を出しています。それをやめてはどうにもなりません」
「タバコはやめました」
Bさん(54)は、1日1箱半のたばこを20歳から吸い続けてきたヘビースモーカー。昨年秋頃は痰と咳だけだったのが息切れをし始めたため病院へ。診断は肺気腫だった。
肺気腫は肺の中にあって二酸化炭素と酸素を交換する肺胞と呼ばれる組織が破壊され、徐々に呼吸困難になる病気だ。
「松尾内科クリニック」(東京・世田谷)の松尾孝俊院長が言う。
「Bさんはすぐに禁煙宣言しました。しかし、薬を使っても症状の悪化を食い止められない状況が続きました。実は禁煙と言っても四六時中吸うのをやめただけ。お酒の場では自由に吸っていて、食後の1本も続けていたようです」
結局Bさんは1年後、酸素ボンベが手放せなくなったという。
「症状はありません」
疲れ目で眼科を受診したCさん(52)は、医師から「年齢的に目の病気が心配だから」といわれ、「視野が狭くなったり、道路や駅の石畳が曲がって見えたりしませんか?」と尋ねられた。心当たりはあったが、治療が面倒だと思い、「大丈夫です」と答えたが、その後視力が急激に低下して「加齢黄斑変性症」と診断された。
「Cさんは疲れによる一時的な眼の異常と思ったようですが、間違いでした」(都内の眼科医)
何気なく聞こえる医師の質問も、すべては患者の症状や治療効果を知るため。病気を治したかったら患者は医師の問いに真剣に答えることだ。
(日刊ゲンダイ2010年5月12日より)
病気かどうかは朝チェックしろ
体調がおかしくなったとき
病気かどうかは”要注意サイン”が一番出やすく、気づきやすい朝チェックしろ
「睡眠」から「活動」に切り替わる朝は、病気のサインが出やすい。「何かおかしい」と思ったら、それは気のせいではない可能性が高いのだ。どういうサインが要注意なのか、専門家に聞いた。
★喉がカラカラに渇いている
「お酒を飲んだ翌朝だけではなく、寝起きに喉が激しく渇いている状態が続くようなら、糖尿病が疑われます」(しんクリニック・辛浩基院長)
血糖値は明け方に高くなるという。
「睡眠中は、明け方に向けて、血糖に関係するホルモン”グルカゴン”が上がっていきます。だから朝に高血糖による症状が出やすいのです。高血糖の症状は、喉の渇き、トイレの回数が増える、疲労感が強いなどさまざまありますが、寝起きに最も強く認識しやすいのがのどの渇きです」(辛院長)
★汗をびっしょりかいている
「まず、高血圧を疑った方がいい。ふらつく、頭が重い、吐き気があるといった症状を伴うようなら、より可能性が高い。自律神経のバランスが崩れて血圧が上がり、大量の汗という症状として表れるのです」(辛院長)
もし糖尿病で経口血糖降下剤の服用やインスリン治療を受けている人なら、朝の汗は別の“異常”のサインになる。
「無自覚性低血糖です。これは日中より深夜、特に朝方に起こりやすい。低血糖を起こすと、冷や汗が出やすいのです。朝の汗は、この冷や汗も考えられます。無自覚性低血糖は、自律神経のひとつである交感神経を刺激し、脳や心臓の血流を悪くして脳血管障害や心筋梗塞のリスクを上げるので、早い対策が必要です」(辛院長)
★頭が痛い
「睡眠時無呼吸症候群ではないかどうかを確認してください。夜中の大きないびき、呼吸がときどき止まる、といった症状が特徴的ですから、家族の協力である程度分かります。放っておくと突然死の危険が高まるので要注意です」(東京慈恵医大精神科・山寺亘講師)
★足首や足の指などに違和感がある
「痛風の前兆です。夏は脱水症状から尿酸値が上がりやすい。寝る前に酒を飲んで朝起きたら違和感、という時は強く疑われる。水分を多く取って本格的な痛風発作に移行しないようにすべきです。」(辛院長)
★目は覚めているが、なかなか起きられない
「うつ病が考えられます。比較的、午前中の体調が悪く、午後になるとマシになるという特徴もあります」(山寺講師)
朝からやる気満々じゃない人は、どれかの症状がないかチェックしよう。
(日刊ゲンダイ2010年9月14日より)
糖尿病の人に朗報3連発
◆画期的飲み薬
◆内臓脂肪を20%落とせる抗肥満薬
◆針なし血糖値測定器
食べ過ぎ、運動不足、肥満などが原因で起こる2型糖尿病。予備軍を含めた“患者数”は2,200万人に上る。その糖尿病について、専門医の間で「治療法が劇的に変わる」とささやかれているのだ。
まず、早ければ年内にも画期的な飲み薬が発売されるという。さらに内臓脂肪を20%落とせる抗肥満薬、針を必要としない血糖測定器の開発も進んでいるのだ。
無理せず血糖コントロールができる時代が確実に近づいているのだ。糖尿病に悩む人や家族にとって、大朗報ではないか。
血糖コントロールがぐっと楽になる
「新しい糖尿病の飲み薬が治療の現場を変えるのは間違いありません。これまでの飲み薬の主役はSU剤と呼ばれる薬で、血糖値とは無関係に膵臓に作用してインスリンを分泌させていました。そのため低血糖が起こりやすく、副作用で2~3キロ体重が増えるのが一般的でした。ところが、年内の発売が噂される“インクレチン”の働きを強める飲み薬は、それがまったくない。逆に体重は2~3キロ減るという報告もあります。これまでの多くの糖尿病の飲み薬は、この新薬にとって代わられるかもしれません」
こう言うのは、糖尿病専門医で「しんクリニック」院長の辛浩基氏だ。
糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンの量の低下と、インスリン感受性の低下が原因で起こる。インクレチンの働きを強める薬はインスリン分泌を増やすだけでなく、感受性の低下も改善する可能性があるという。
「インクレチンとは食後に消化管から分泌され、膵β細胞に作用してインスリン分泌を促す消化管ホルモンの総称です。単に膵臓からのインスリン分泌を2.5倍増幅させるだけではありません。食事量をあらかじめ予測してインスリンの分泌量を調整し、脳に働きかけて食欲を抑制します。動物実験ではインスリンを分泌する膵β細胞の増殖促進作用があることも確認されていて、インスリン抵抗性を改善。弱った膵臓を修復して長持ちさせる効果も期待されているのです。」(辛院長)
(日刊ゲンダイ2009年11月より)
プロが“選定” 血糖値測定器ガイド あなたにはコレがいい!
血糖コントロールの“強力助っ人”
一般人でも気軽に扱える簡易血糖自己測定器が、薬局やネットで買えるようになり、自分で血糖値を測る人が増えている。食事や運動に伴う血糖値の変動を知れば、「どんな食事がやばいのか」「運動はいつ、どの程度やると、血糖値の上昇を抑えられるのか」などがわかるからだ。
ところがいざ簡易血糖測定器を買うとなると、いろいろなタイプがあって、決められない。そこで、糖尿病専門医に正しく賢い選び方を聞いた。
「簡易血糖測定器は20種類ほど販売されていますが、大切なのは“痛みが小さいもの”を選ぶこと。痛ければ、自己測定は長続きしませんからね」
日本糖尿病学会指導医で「AGE牧田クリニック」の牧田善二院長はこう言い、続ける。
「簡易血糖自己測定器は自分で針を刺して採血し、それを機械が読み取り血糖値を表示します。採血は指先、手のひら、腕などで行いますが、痛みが少ないのは腕です。糖尿病が進んで神経障害が出ている人は別ですが、糖尿病予備軍の人は腕で測定できるタイプがおすすめです。当院では患者さんにニプロフリースタイル(発売元ニプロ)という機種をすすめています」
ただし注意点があるという。手や指は毛細血管を測るが、腕は毛細血管の周りにある組織液を含んだ血液を測る。そのため、血糖値の変化が遅れて出ることがあるのだ。「その差は15~20分といわれています。まだ大丈夫だと思っていても、実は低血糖だったということもありえます」(牧田院長)
値段は1万~2万円が目安
“痛みは我慢できるが機械に弱い。わかりやすい方がいい”という人には「ワンタッチウルトラビュー」(ジョンソン・エンド・ジョンソン)がおすすめだ。
「大型のカラー液晶画面で日本語表示されます。お年寄りや女性に人気です」(「しんクリニック」辛浩基院長)
記憶容量が多いのは「アキュチェックアビバ」(ロシュ・ダイアグノスティックス)。500回まで記憶できる。1日3回測定の人でも、5ヵ月間は測定結果が残る計算だ。特殊加工の針先とハイスピード穿刺もウリで、指先採血の痛みを抑える工夫もされているという。
簡易血糖測定器の針とセンサーは使い捨てなので、計測のたびにコストがかかる。「アセンシアブリオ」(バイエル薬品)ならコストは1回100円以下。150円超の機種もあり、測定回数によっては、月に数万円も“得”になるケースもある。
「ただし、記憶容量が10回と少なく、たくさん記憶させておきたいという人にはおすすめできません」(都内の薬剤師)
なお、測定器の数値は種類によって異なり、病院での検査数値とは10mg/dl程度違うものもあることを覚えておこう。
「他機種や病院での検査と数値が違ったからといって、糖尿病の薬を使っている人が勝手に投薬量を変えると事故につながる可能性があります。あくまで測定は同一機種で行い、異変があれば医師に相談してください。また、血糖測定値は密温(15~25度)での使用を想定。寒冷地や冬場の屋外だと高めに表示されます。こうした機械の特徴を知っておくことも大切です」(辛院長)
気になるのは値段だが、測定器本体以外に穿刺針などをすべてそろえると、税込みで1万~2万円が目安のようだ。
(日刊ゲンダイ2009年10月27日より)
糖尿病 「夢の治療薬」ではないDPP-4阻害剤
後悔しない治療「糖尿病」
DPP-4阻害剤
「ジャヌビア」「グラクティブ」「エクア」といえば、糖尿病の新たな経口血糖降下薬として大きな注目を浴びるDPP-4阻害剤だ。優れたインスリン分泌促進効果がありながらマイルドで低血糖を起こしにくい。さらに膵臓の保護・再生作用も併せ持つ”糖尿病の画期的万能治療薬”と宣伝されてきたが……。
「しかし、ここにきて重篤な低血糖から意識障害を招くなどの症例報告が続出し、医療現場に大きな衝撃を与えています」
こう指摘するのは糖尿病治療の最前線で奮闘する「しんクリニック」(東京・JR 蒲田駅前)辛浩基院長だ。
確かに「ジャヌビア」の市販直後調査によると、昨年10月の承認直後から今年の5月上旬までに138件の低血糖が発生し、そのうち53件が重篤な低血糖であったと報告されている。
「とりわけ従来の代表的な経口血糖降下薬のスルホニルウレア剤(SU剤)と一緒にDPP-4 阻害剤を服用する時は、要注意です。いずれも膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を一挙に増やすため、重篤な低血糖に陥りやすいのです」
事態を重く見た(社)日本糖尿病協会は、「『ジャヌビア』『グラクティブ』などのDPP-4阻害剤を処方する場合、SU剤を減量する場合、SU剤を減量するように」との緊急情報を発表した。すでに厚労省からも薬の添付文書改訂の指示が出され、「重大な副作用」の項目に低血糖への注意を喚起する文言が加えられた。
「DPP-4阻害剤は食後など血糖値が高い状態の時程よく効く一方、血糖値が下がると働かなくなるため、低血糖に陥りにくい『夢の新薬』との前評判でしたが、決してそうではないのです」
重篤な低血糖が続発。従来の経口血糖降下薬の組み合わせがよいケースも
厚労省からの承認を得る為の国内臨床試験(治験)においても、主な副作用の第1のものとして低血糖(1.4%)の発症が報告されていた。
「また、DPP-4阻害剤がよく効かない患者さんも3~4割いるため、これまでのSU剤や肝臓で糖新生を抑えるビグアナイド剤、インスリンの効果を高めるインスリン抵抗改善薬などを組み合わせた処方のほうがよいケースも少なくないのです。」
要は食事療法と運動療法をベースに生活スタイルの改善に努め、個々の患者に即した適切な薬の処方が不可欠とされるのである。
「糖尿病の治療薬で低血糖に陥ると、発汗や手足のふるえ、動悸、吐き気などが生じ、最悪の場合は意識障害から死を招くこともあります。確かにDPP-4阻害剤は優れた新薬ですが、糖尿病の『夢の薬』『万能薬』でないことは肝に銘じておかねばなりません」
(日刊ゲンダイ2010年7月15日より)
薬で糖尿病を予防する
初めて認可された発病予防薬の実力は・・・
食べたいものを我慢し、散歩や水泳などの運動でひたすら汗を流す――。
血糖値が高めの人が2型糖尿病を避けるには“自己努力”しかない。そう思ってガンバっている人は多い。ところが、そうではなかった。昨年9月から日本で初めて糖尿病の発病予防薬が認可・発売され、糖尿病は薬で予防できるようになっているのだ。
どんな薬で、効果はどうか?糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)院長の辛浩基氏に聞いた。
「認可されたのはαグリコシダーゼ阻害薬という飲み薬です。小腸から糖分が吸収されるのを抑制します。食後の過血糖を抑える糖尿病の薬ですが、国内外の研究で血糖値が高く耐糖能異常(IGT)者と呼ばれる糖尿病予備軍の人が飲むと、2型糖尿病の発症を抑えることが分かったのです。」
実際、9カ国が参加した大規模臨床試験で、αグコシダーゼ阻害薬を投与する群と偽薬の群に分けて平均3.3年調べたところ、2型糖尿病の発症を約4割、心臓病などの心疾患の発症リスクを5割抑えた。日本では順天堂大学グループが日本人1,780人を対象にした大規模試験を行い、2型糖尿病の発症を4割減らしたことが報告されている。
「αグリコシダーゼ阻害薬は日本でも数種類発売されていますが、日本で臨床試験が行われたのは“ベイスン”だけ。そのため、この薬だけが糖尿病の予防薬として認可され、保険適用になったのです。」
ただし保険対象になるのは、食事療養や運動療法を3~6ヶ月続けても効果がなく、高血圧や脂質異常症があるIGTの人だ。
どんな薬?効き目は?
気になる効果は、どうなのか?
「“予防薬”ではありますが、あくまで糖尿病の発症を先延ばしするだけで、完全に糖尿病発症を予防できるわけではありません。しかし重要なのは心臓病の発症リスクを大幅に減少させることです。 空腹時血糖が正常でも食後過血糖の人は、糖尿病の人と同じで心臓病の発症リスクが高いことが知られています。IGTの人で、心臓病の人、家族に心臓病の患者さんがいる人、丼物やカレーライスなど一気にご飯をかき込むことが多く食後すぐに眠くなる食後過血糖の人、喫煙習慣がある人などは飲んだほうがいいでしょう。」
ベイスンは0.3ミリと0.2ミリ入りの2種類あり、値段は3割負担の人でそれぞれ1錠約20円と約15円。ジェネリックも発売されているが、こちらは糖尿病の発症予防としての適応が通っていない。
「毎日3錠飲むのは大変という人は、宴席前などにサプリメント感覚で飲むのも手です。極端な過血糖を抑えられれば、心臓病の発症を抑えるメリットはある。お腹が張るという副作用もスポットで飲むのなら我慢できるでしょう。」
糖尿病予備軍の人のなかには、糖の吸収を抑えるというサプリメントを飲む人も多い。しかし、医学的データもしっかりしていて値段も安い「薬」を検討するのもいいかもしれない。
(日刊ゲンダイ2010年8月6日 ~集中連載【3】夏危ない糖尿病をもっと知る~ より)
太らず禁煙する
たばこをやめても肥満になってはバカバカしい
「今まで意地でもやめるものかと吸い続けてきたが、もう限界。たばこはやめた」
10月のたばこ値上げを機に禁煙しようという人が少なくない。しかし、「禁煙すると太る」という。“禁煙太り”だ。たばこはやめたが、体はぶよぶよ、ではたまらない。
太らず禁煙するには、どうしたらいいのか?
糖尿病専門医で禁煙指導にも熱心な「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長に聞いた。
「禁煙で太るのは、喫煙で弱った胃賜の働きが改善され食欲が増す上に、たばこを吸わない口寂しさから間食に走るためといわれます。が、実際には、たばこに含まれるニコチンのせいです。ニコチンには食欲を抑える作用があるうえ、エネルギー代謝を活発にする働きがある。それを突然取らなくなれば、太るのは当然です。問題はそれだけではありません。禁煙直後の血液は“太りやすくなっている”のです」
喫煙は糖尿病の発症リスクを高めることが知られている。たばこを吸っていると、インスリンの分泌量は正常でも、インスリンの効きが悪く、ブドウ糖の処理能力が低くなるからだ。
「にもかかわらず血糖値が正常という喫煙者は、たばこを吸わない人に比べて血液中にインスリンが多く必要な“高インスリン血症”の状態に陥っている可能性があります。この状態で食欲が増してブドウ糖がどんどん血液中に流れてくると、エネルギーとして使われない余ったブドウ糖を、インスリンがせっせと肥満細胞に取り込んでしまう。その結果、より太りやすくなるのです」
禁煙直後の”血液内の太りやすい環境”をどうするのかもポイント
しかも、禁煙後の体重増加で増えるのは、内臓脂肪よりも皮下脂肪が多いという研究がある。これが本当なら、皮下脂肪は内臓脂肪に比べて落としくいから、禁煙で太った体はなかなか元には戻らないことになる。
「太らない禁煙を目指すなら、少なくとも禁煙と同時にダイエットに励むことです。それも”走る”“泳ぐ”といった循環器の能力を上げる運動より、基礎代謝の向上につながる筋肉をつける運動が大切です」
筋肉には2種類ある。ゆっくりした反復運動でつく筋肉と高速運動でつく筋肉だ。基礎代謝を上げるにはエネルギー消費の多い前者の筋肉をつける必要がある。
定番のスクワットのほか、四つん這いの姿勢で上げた腕を前方に突き出し、その反対側の足を上げて背中の筋肉をつける運動もいいだろう。
さらに、“血液内の太りやすい環境”を改善することが大切だという。
「カレーや丼物など血糖値が上がりやすい炭水化物の一気食いをしないこと。血糖値が急激に上がりますからね。また、薬を使うのも手です。例えば糖尿病予防も兼ねて、ボグリボースという糖尿病予防薬を使ってもいいかもしれない。もとは2型糖尿病患者向けの飲む薬ですが、昨年から2型糖尿病予防の効能がある薬として認められています。禁煙後、高インスリン血症状態を脱するしぱらくの間、インスリン抵抗性を改善するこの薬を飲むのもいいでしょう」
一般的なダイエットだけでは“禁煙肥満”はなかなか防げないのだ。
(日刊ゲンダイ2010年11月3日より)
糖尿病が引き起こすアソコの異変 男も女もご用心
糖尿病でアソコに異変が起きることがあるのをご存じか?かゆくて赤くただれたり、ぶつぶつができたり・・・。ときには性病と疑われて、妻や彼女にあらぬ疑いをかけられることもあるという。人には相談しにくい、糖尿病が引き起こすアソコの異変について専門家に聞いた。
40代のAさんが自宅から遠く離れた泌尿器科を受診したのは、性病を疑ったからだ。
「ペニスがかゆくてたまらなくなったのです。よく見ると包皮がかぶさった部分が赤くなり、白っぽいカスがたまっている。実は数日前、居酒屋で知り合った30代のOLと行きずりの関係を持ってしまった。それで。“やばい病気にかかったのではないか”と不安になって……」 (Aさん)
ところが、診察の結果は亀頭包皮炎だった。Aさんが受診したのは、群馬県高崎市の「うめやま医院」。日本性感染症学会認定医でもある梅山知一院長が言う。
「亀頭包皮炎の原因菌は、いわゆる性病の菌ばかりではありません。もともとその部分にすみついている雑菌の活動が、セックスなどがきっかけになり活発になって引き起こされます。Aさんのケースはセックスをしたときに付着した雑菌やカビが暴れたことも考えられますが、むしろ、もともとAさんに寄生していた雑菌やカビが暴れた可能性が高いと思います。実はAさんは重度の糖尿病だったからです」
そのときも血液検査したところ、空腹時血糖値が300ml/dl超(正常範囲70~110mg/dl未満)。あきらかに糖尿病だった。
「Aさんには抗菌剤などを処方しAさんの自宅近くの糖尿病専門医を紹介、すぐに糖尿病治療をしてもらいました。血糖値が落ち着くと同時にかゆみは治まり、炎症も消えました。最近は、こうした人が増えているのです」 (梅山院長)
これは男性だけの症状ではない。女性も糖尿病が原因でアソコの常在菌が暴れ回るケースがある。
Bさんは3ヵ月ほど前、妻に口をきいてもらえなくなった。“へそくりがばれたのか”とも思ったが、お金のことで文句があるふうでもない。しばらくして今度は急に妻が運動や食事に気を使い始め、それと同時にBさんへの態度も優しくなった。
「不思議に思い、妻に問いただしたところ、“私はあなたに性病をうつされたと思っていた”というのです」 (Bさん)
確かに3ヵ月ほど前に夜の生活があったが、妻はその頃からアソコがかゆくなったらしい。産婦人科を受診。膣炎と診断され薬をもらっていたが、具合がよくない。
そこで産婦人科医からのアドバイスを思い出し、糖尿病専門医で診てもらったところ、糖尿病による細菌性脛炎だった。その糖尿病専門医で「しんクリニック(東京・蒲田)の辛浩基院長が言う。
「Bさんの奥さんは空腹時血糖値が250を超え、1ヵ月ほどの血糖値の状態を表すヘモグロビン(HbA1c)が11%以上(基準値4.3~5.8%)もありました。彼女は中肉中背で決して肥満タイプではなかったのですが、それからは糖尿病治療に励み、急激に血糖値が上がらないよう努め、膣炎は治まったようです」
糖尿病の人は抵抗力が弱っているため、感染症全体に注意しなければならない。常在菌が悪さをすることも覚えておこう。
(日刊ゲンダイ2010年11月10日より)
糖尿病 高血圧 高尿酸血症・痛風
今から知っておこう
年末年始のダメージがわかるチェックポイント5つ
暴飲暴食、運動ゼロのぐうたら生活が確実に指標数値をあげる
年末年始の暴飲暴食、運動不足のぐうたら生活は、確実にあなたの血糖値、血圧、尿酸値を上昇させる。これを放っておけば、すでに糖尿病、高血圧、高尿酸血症・痛風の人なら、症状悪化で合併症や脳卒中などのリスクが一気に高まる。“予備軍”で踏みとどまっている人なら、本格的な“持病人”の仲間入りだ。そこで、できるだけ早く手を打つために、年末年始の“ダメージ度”を自分でチェックする5つのポイントを専門家に聞いた。
(1)風邪をひきやすく治りにくい (2)歯や歯茎の調子が悪い (3)疲れやすい (4)肌がかゆい (5)甘いものをやたらと食べたい
「糖尿病が悪化すると免疫力が下がり、風邪をひきやすくなったり、歯周病が進んだりします。疲れやすくなるのは糖尿病悪化の特徴。さらに頻尿になって体の水分が奪われ、今の季節では肌の乾燥がひどくなり、かゆくなる。また、血糖値が上昇すると甘いものが欲しくなり、さらに血糖値が上昇するという悪循環になります」 (「しんクリニック」辛浩基院長)
(1)~(5)の2つ以上に該当するなら、尿に糖が出ているか分かる市販の試験紙で調べ、糖が出ていたら病院へ。一つ該当なら少なくとも1ヵ月間は食事・飲酒量を減らす。
「ただし(3)に関しては、1つ該当でもすぐに病院に行ってください」 (辛院長)
(1)起きたら顔が腫れている日が3日以上続く (2)靴下のゴムのあとがくっきり付いている (3)頭痛が続く (4)ふらつく (5)動悸がする
「血圧上昇は脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めます。特に(3)~(5)に該当する場合は、会社を休んででもすぐに病院へ。普段から頭痛持ちの人も、いつもの頭痛かどうかを自己判断するのは困難。専門医のチェックが必要です。(1)と(2)はそこまでの緊急性はありませんが、塩分の取りすぎで体がむくみやすくなっていることが考えられます。家庭用血圧測定器で、起床時と就寝前の血圧を調べてください」 (辛院長)
次の(1)~(5)は、足、手の関節周辺に起こる。多くはないが、ひざやひじに起こることもある。
(1)熱い、または冷たい感じがする (2)チリチリする (3)履き慣れた靴なのに合わない (4)うずく (5)軽い捻挫のような痛みがある
「この段階なら、痛風発作を回避できる手があります。食生活改善は大前提とし、患部(症状があるところ)の安静を守り、1日2リットルの水を飲む。絶対に禁止なのは、尿酸値を下げる薬を、これまで飲んでいなかったのに開始する、あるいは規定以上に飲む、です。急激に尿酸値を下げ、発作が起こりやすくなる。また、血圧測定を日課にすると、痛風対策になります。尿酸値が上がると、血圧も上昇しやすくなるからです」 (「両国東‐クリニック」大山博司理事長)
最後に、3つの生活習慣病すべてに通じる簡単なチェックポイントを紹介しよう。
「ベルトの穴が1つ太い方に移動したら、内臓脂肪増加で糖尿病、高血圧、痛風すべての数値が悪化している可能性大。すぐにダイエットして、体重を落としてください。やらなければ、その内臓脂肪は定着し、あらゆる生活習慣病のリスクが上がります」(辛院長)
(日刊ゲンダイ2010年12月21日より)
マラソン 風邪気味で走ると心不全で突然死の恐れ
ハマっている人多いけど
なめたら危ない! 風邪症状の原因ウイルスが心筋にダメージ与え心筋炎起こす |
「風邪気味だが、半年前から練習を積んできたマラソン大会。ゆっくり走れば大丈夫だろう」
マラソン好きの中には風邪症状を軽く考えている人も大勢いるのではないか。
しかし、風邪やインフルエンザをなめてはいけない。こうした風邪症状の原因となるウイルスには、心臓の筋肉(心筋)にダメージを与え心筋炎を起こすものがある。そんな状態で、心臓に負担がかかるマラソンを“強行”すれば、心不全による突然死を招きかねないというのだ。
「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長に聞いた。
40代のAさんは学生時代ラグビー選手だったのが自慢。多少の体調不良はジョギングや水泳などのスポーツで吹き飛ばすという肉体派だ。
ところが、先日風邪で熱があったにもかかわらず、マラソン大会に向けた練習をしていたところ、急に胸が締め付けられ、呼吸困難に。救急車で搬送された病院で告げられた病名は「心不全」。医師からは“急性心筋炎によるもので、もう少し遅ければ命の保証はなかった”と言われたという。
「Aさんは年に1回の会社の人間ドックを欠かさず受けていて、一度も心臓に問題があると言われたことはありませんでした。しかし、心筋炎になる人は、Aさんのように普段心臓に何も問題がないと言われる人も多いので、油断はできません。心筋炎の中には、劇症心筋炎といって心不全を起こし、突然死するケースも少なくないのです。冬に突然死が多いのはこのためで、風邪症状を甘くみではいけません」
心筋炎とは心筋に炎症が起き心筋が破壊され、心臓の機能が低下する病気だ。
薬や放射線、妊娠などでもなるが、原因のほとんどがウイルスによるもの。コクサッキー、エコー、アデノなどの風邪ウイルスのほか、インフルエンザウイルスが知られている。
「心筋炎の症状は、まず発熱、頭痛、倦怠感、下痢や腹痛といった風邪症状が出ます。Aさんもそうですが、この風邪症状が、心筋炎の症状であることがあるということを、知らない人が多いのです。心筋炎の場合の特徴は、血圧が下がること。心臓の異変で動悸や胸部の痛み、不整脈などが起きることもあります。ただし、心筋炎の中には症状のないものもあります」
心筋炎は1~2週間ほど炎症期間が続き、多くはその後自然回復するといわれる。その間は安静にしておくことが大切なのだ。
「もちろん、マラソンだけでなくその他のスポーツや飲酒など、心臓に負担がかかることは避けた方がいい。脈がおかしい、胸が痛いなどの異変がある場合は、病院で検査してもらうことです。なお、まれにですが心筋炎が自然に治った人の中には、心臓が拡大し、心臓の動きが低下するといった、慢性の心筋障害を起こす人がいます」
風邪、インフルエンザといった呼吸器の感染症は、心臓発作や脳卒中などの発症リスクを増大させるとの英国の研究もある。
それによると、心臓発作、脳卒中のリスクともに、最初の1週間でおよそ2倍、3日間ではおよそ4倍に増加するという。「風邪気味だけど大丈夫」なんて考えは大間違いなのだ。
(日刊ゲンダイ2011年2月2日より)
一年で一番高くなる2月に血糖値(HbA1c)を測ろう
糖尿病が心配な予備軍の皆さん
「冬場は血糖値が上がりやすいのをご存じでしょうか?とくに2月は、糖尿病の診断基準のひとつで、過去1~2ヵ月の血糖値の平均を示すヘモグロビン(Hb)A1c(正常値4.3~5.8%)が、一年で最も高くなる傾向があります」
こう言うのは「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長だ。
実は、これが“糖尿病阻止”に役立つのだ。自分が糖尿病の予備軍だとわかっていても、食事や運動の生活改善はなかなかできない。ずるずると血糖値が上がり、本格的な糖尿病になり後悔する人がいかに多いことか。きっとあなたの周りにもいるはずだ。
そこで不可欠なのが「糖尿病への強い危機感」。これを持つために「一年で最も高くなる2月にHbA1cを測る」のだ。
国立国際医療研究センター病院の糖尿病・代謝症候群診療部の野田光彦部長らが、糖尿病患者のHbA1cを月3,000~5,000回、延べ67万回測定したデータを、月別平均に直して調べたところ、2月が最も高く9月が最も低かったという。
「全体の変動幅は平均0.15%でした。他院ではインスリン注射をしている人だと0.49%も違っていたというデータもあります」(同センター病院の峯山智佳氏)
2月測定の高値HbA1cはショックだろうが、それを危機感に変え、生活改善のチャンスだと受け止めればいい。そうすれば、血糖値を改善する“原動力”になる。
前出の辛浩基院長が言う。
「糖尿病予備軍の人は、血糖値が低く出やすい春や秋に健康診断を受けることが多く、危機感が足りませんからね。HbA1cが一番高い2月と低い9月の差は、人によっては0.5%近くあります。ならば、糖尿病予備軍の人は、2月にHbA1cを測ることです。それで自分の糖尿病リスクを知り、生活を変えるキッカケにすればいいのです」
高数値に危機感持ち真剣に生活改善―血糖値改善の”原動力”になる
Aさん(43)は、3年前の2月、末っ子の誕生をキッカケに生命保険に加入しようとしたが、健康診断の結果を見て驚いた。前の年の春の会社の健康診断では“境界型”だったのが、このときはHbA1cが6.5%を超え、“糖尿病”と診断されたのだ。
しかし気を取り直し「なんとかしないと」と奮起。糖尿病専門医のアドバイスを忠実に守り、3ヵ月ほど食事の改善と運動に励んだ結果、血糖値は元に戻ったという。
HbA1cの2月測定値が最高になるのはなぜか?すぐに思いつくのは、年末年始の食生活や冬場の運動不足。逆に9月が低いのは夏場の食欲不振や旺盛な運動量が考えられる。
しかし、「HbA1cの季節変動はそれだけでは説明がつかない」と野田光彦部長(前出)が言う。
「実は人種も生活習慣も違う10以上のエリアで比べても、血糖値は冬に悪くなり、春から夏にかけて改善するという傾向があります。つまり、日本独特の年末年始の食生活や、冬場の運動不足だけが原因とは考えられないのです。そこで日の出から日の入りまでの日の長さや気温の変化などと、HbA1cの季節変動の要素である“インスリンの作用に影響するホルモン”の分泌量などを比べると、相関関係にある可能性があることがわかったのです」
つまり、2月は自然とHbA1cの測定値が高くなるメカニズムが人間にはあるのかもしれないのだ。
それを、“活用”しない手はない。ちょうど今は2月。さあ、あなたもHbA1cを測ってみよう。
(日刊ゲンダイ2011年2月9日より)