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糖尿病治療のおはなし

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血糖正常化への道のり ~インスリン治療の次の一手~

Medical Tribune 2010年9月9日 特別企画
提供:サノフィ・アベンティス株式会社
LANTUS Forum in Tokyo

演者 寺内 康夫 氏
横浜市立大学大学院分子内分泌・糖尿病内科学 教授

座長 綿田 裕孝 氏
順天堂大学代謝内分泌学 教授 

2型糖尿病の治療において、経口血糖降下薬による血糖コントロールか不十分な場合、インスリン治療の導入が検討される。しかし、わが国では導入のタイミングが遅れがちなことに加え、血糖コントロール不良にもかかわらず次の治療法に切り替えられないままの患者も多い。
本フォーラムでは、横浜市立大学大学院分子内分泌・糖尿病内科学教授の寺内康夫氏が、経口血糖降下薬と基礎インスリンを併用するBasal supported Oral Therapy(BOT)から始まりBasal Plus, Basal Bolusと進むインスリンによる段階的治療構築の必要性について論じた。
 

インスリン導入が遅れるわが国の治療の現状

わが国の2型糖尿病患者は、増加の一途をたどっている。それに伴ってインスリン導入例も増えているが、一般臨床医および糖尿病専門医を対象にした血糖管理状況に関するアンケート調査によると、インスリン治療を行っている糖尿病患者の平均HbAlc※は7%台半ばと、行っていない患者の6%台後半よりも有意に高く(Pく0.0001,Student's t-test)、一般臨床医と専門医の患者間で有意な差は認められなかった(Arai K, etal. Diabetes Res Clin Pract 2009; 83: 397-401)。
このような現状を踏まえ、寺内氏はわが国のインスリン導入の現状を調査したCANDO試験を紹介した。同試験によると、多くの患者はHbAlc※8.1~9.0%の時点で医師からインスリン治療を推奨されるもの の、実際の導入期のHbAlcはそれよりやや高い8.1~10.0%というケースが多かった(図1)。このように、わが国では全体的にインスリン導入が遅れており、同氏は「大きな問題である」と指摘した。
同試験ではインスリン導入後、多くの患者が「思ったよりも注射は難しくなかった」、「もっと早く開始すればよかった」と気持の変化を経験している。同氏は「患者のインスリン治療への抵抗感を軽減し、適切な時期に治療を開始するメリットをしっかりと伝える必要がある」とした。

目標値達成にはインスリン導入のタイミングが重要

インスリン治療においては、低血糖を来さず、可能な限りHbA1cを正常に近付けることが求められる。しかし、HbA1c※9.0%の時点でインスリンを導入し、1.0%低下させたとしても、治療目標である6.5%未満に到達しないのであれば、それは導入が遅すぎたことになる。
寺内氏らが自施設で実施した検討では、新たにインスリン療法を導入する2型糖尿病患者を、強化療法群と混合型インスリン製剤2回投与群の2群に分け、血糖の変化を比較した。その結果、12週後には両群ともHbA1c※が切り替え前の10.0%程度から7.0%程度まで低下し、インスリン療法による血糖改善効果が示されたものの、強化療法群においても6.5%未満には低下しなかった(Nezu U,et al. Endocr J 2009; 56: 193-200)。
同氏はこの結果を踏まえ「目標値到達のためには導入時期が重要であるとともに血糖コントロールが不十分な場合、次の一手としてどのようにインスリン治療を行っていくかが大事である」と段階的な治療の重要性を強調した。

4-T Studyから考えるインスリン導入と段階的治療

2型糖尿病の治療では、定期的に治療を見直すことにより血糖コントロール不良の時期をできる限り短くすることも求められる。現在、欧米における治療戦略の主流は、食事療法および運動療法で治療を開始し、コントロール不良であれば薬物療法、それでも不十分の場合はまず基礎インスリン療法から導入し、さらには頻回インスリン療法に進むという段階的治療である(Del Pratos,etal. Int Clin Pract 2005; 59: 1345-1355)。
そこで、寺内氏は段階的な治療の参考例として、4-T Studyを紹介した。同試験は、基礎インスリンによるBOT、混合型インスリン2回/日投与、追加インスリン3回/日投与の3種類の異なるインスリン療法導入とその後の段階的治療を検討している。
同試験では、経口血糖降下薬で効果不十分な2型糖尿病患者708例を、超速効型インスリン3回/日投与群(超速効型群)、混合型インスリン2回/日投与群(混合型群)、持効型インスリン1~2回/日投与群(持効型群)にランダム化し、 HbA1cの推移を3年間追跡した。試験開始1年後に血糖コントロールの改善が不十分〔HbA1c(NGSP値)6.5%未満〕であった場合は、次の一手として超速効型群には就寝前に持効型インスリン、混合型群には昼食前に超速効型インスリン、持効型群には毎食前に超速効型インスリンをそれぞれ追加した。
その結果、次の一手を打った3年後のHbA1cの変化度は3群とも同程度であったが、HbA1c(NGSP値)6.5%以下の達成率は、持効型群で43.2%、超速効型群で44.8%、混合型群で31.9%となり(図2)、混合型群に対し、持効型群、超速効型群の達成率は高かった。持効型群は低血糖発現頻度、体重増加率とも他の2群より低かったことから、基礎インスリンで治療開始するほうが有益であることが示唆された。

 

混合型製剤からの強化療法へのステップアップ

わが国では混合型インスリンからの導入が多いが、混合型インスリンには、「インスリン治療に生活を合わせる必要がある」、「用量の調節がわかりづらい」、「低血糖のため増量しづらい」、「攪拌作業による効果のばらつきがある」などの問題点がある。さらには、血糖コントロールが不十分な場合に全く違う製剤を使った治療法に変更する必要があるため、外来での強化療法への変更が難しいとされている。
そこで寺内氏は、混合製剤でコントロール不良例の段階的治療として持効型インスリン製剤のインスリングラルギン(遺伝子組み換え、以下グラルギン)を用いた強化療法への切り替えを検討したGINGER Studyを紹介した。対象は、混合型インスリン2回/日とメトホルミン併用療法でコントロール不良の2型糖尿病患者310例。これらをグラルギン/インスリン グルリジン(遺伝子組み換え、以下グルリジン)群(グラルギン1回/日就寝時、グルリジン毎食前:153例)、混合型インスリン群(2回/日:157例)にランダム化し、52週間追跡した。
その結果、HbA1c(NGSP値)は混合型群においてはベースラインの8.51%から7.71%と0.8%低下し、グラルギン/グルリジン群ではベースラインの8.62%から7.31%と1.3%の低下を示した。血糖目標達成率〔HbA1c(NGSP値)7.0%以下〕は混合型群の27.9%に比し、グラルギン/グルリジン群で46.6%と有意に高かった(P=0.0004,ANCOVA)。また、低血糖発現頻度やインスリン投与量の変化には両群間で差が見られなかった(Fritsche A, et al. Diabetes Obes Metab 2010; 12: 115-123)。
以上から、グラルギン/グルリジン群は有効な治療法であることが示唆されたが、体重は増加しており、同氏は「臨床においては血糖改善と体重変化のメリットとデメリットをよく見極めることが大切だ」と述べた。

グラルギンへの切り替えで低血糖の質が変化

続けて寺内氏は、混合製剤でのコントロール不良例からBOTに切り替えた大工原らの検討を紹介した。
同検討の対象は、混合型インスリン2回/日投与で12週以上にわたりHbA1c※7.0%以上であった2型糖尿病患者110例。これらを、混合型製剤の1日投与量の80%相当量でグラルギン1回/日投与に切り替え、グラルギン投与量は空腹時血糖110mg/dLを目標に調節し、16週にわたって追跡した。
経口血糖降下薬はスルホニル尿素(SU)薬グリメピリド0.5~3.0mg/日およびメトホルミン250~750mg/日。患者背景は平均年齢55.4±14.1歳、平均BMI 24.9±4.7、平均罹病期間9.9±7.1年、平均インスリン治療期間6.2±4.0年、平均混合型インスリン投与量は22.8±9.8単位であった。
その結果、平均空腹時血糖値は146mg/dLから113mg/dLに平均HbA1c※も7.6%から6.8%に有意に低下した(図3)。
同氏は、同検討において重要なポイントは110例中62例(56%)がHbA1c※6.9%以下を達成したことと指摘。また、切り替え前と比べて体重は1.3kg減少、インスリン投与量は2.8単位増量した。低血糖の発現は18件であった。さらに低血糖の質が「ゆっくり来る」、「倒れない」、「自分で対処できる」というように変化していることも注目されるという。
混介製剤からグラルギンに切り替える段階的治療の目安については、弘世らがまとめている。これによると、グラルギンヘの切り替え開始量は前治療の1日投与量の約70%で、グリメピリド1.Omg/日を併用する。目標空腹時血糖値110mg/dLを達成しているにもかかわらずHbA1c※ 7.0%以上の場合は、次なる段階的治療として追加インスリンを3単位/回から開始すること提唱している。

BOT,Basal Plus,Basal Bolusへと続く“次の一手”

グラルギンを用いた治療アルゴリズムを検討したAT.LANTUS studyのサブ解析では、混合型インスリン治療でコントロール不良の2型糖尿病患者686例を,グラルギン1回/日就寝前と経口血糖降下薬群(384例)、それに追加インスリン1回/日を加えた群(21例)、追加インスリン2回群/日(116例)、追加インスリン3回群/日(165例)の4群間でHbA1c(NGSP値)の推移を検討した。なお、切り替えの際の用量は、混合型インスリンの約2割減から開始して調整した。
その結果、HbA1c(NGSP値)減少率は,グラルギン群の0.67%に対して追加インスリン1回群1.22%、2回群1.61%、3回群1.43%であり、基礎インスリン療法の次なる段階的治療として追加インスリンの回数を増加する強化インスリン療法は有用であることが示唆された(Davies M,etal. Diabetes Res Clin Pract 2008;79: 368-375)。空腹時血糖値は4群とも有意な低下が見られたが、追加インスリンが増えるとともに体重の増加も大きくなるので、その点は注意が必要という。
寺内氏は総括として、インスリン療法においては最終的に強化療法に進むことを意識して段階的治療を構築することが重要であると強調し(図4)、「現在、混合型インスリンで導入してコントロールが不十分な患者さんがおられることも事実であり、それに対する次の一手として、基礎インスリンに切り替えるBOT、さらにはBasal Plus、 Basal Bolusへと進めていくことを1つの治療選択肢として考慮すべきである」と講演をまとめた。

 

Voices of participating doctors

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